夏休み明けの「早期入塾」でやってはいけないことは 有名塾キーマンが語る中学受験「9月入塾」の是非

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 少子化の進行とは裏腹に、首都圏の中学受験率は年々上昇を続けており、2026年度には過去最高水準の約20%に達すると予測されている。「御三家などの最難関校へチャレンジする」というかつての受験スタイルから、「確実に合格できる学校を選ぶ」という堅実志向へと保護者の意識は変化しつつある。このように中学受験を巡る勢力図がかつてないほどの様変わりを見せる中、近年注目を集めているのが「9月入塾」を始めとする早期入塾の動きである。従来の新小学4年生直前の2月ではなく、それ以前から中学受験に向けた準備を始めるべきなのだろうか。SAPIX、四谷大塚、早稲田アカデミーのキーマンたちの証言から、早期入塾に対する考え方を読み解いていく。

【SAPIX】受験勉強本格化に向けた「助走」としての小3期間

 近年、早い段階から塾通いを始める子どもが増加する中、SAPIX教育事業本部長の広野雅明氏は3年生までの期間を勉強の「先取り期間」ではなく「助走期間」と位置づけている。

「早く入塾したからといって、勉強の先取りを行うわけではありません。現実問題としてそれぞれの成長段階に合わせた学習を行わないと、単なる丸暗記になってしまいます。大多数のお子様にとっては、やはり学年相応のことをしっかりやっていったほうが本人のためになると私たちは考えています」

 こうした考えのもと、同塾では3年生までは通塾頻度を週1回とし、宿題やテストに追い立てられることなく学びを楽しめる環境を整えている。この時期に入塾するメリットとして広野氏が挙げるのが「講師の目が行き届きやすい」という点だ。一気に人数が増加する2月に比べ、新規入塾者が少ない時期の方が、一人ひとりの学習姿勢や得意・不得意に対してきめ細かなアドバイスが行いやすいのだという。さらに広野氏は、2月までに子どもの「学習環境づくり」をサポートすることが保護者の重要な役割であると強調する。

「なるべく当人が勉強に集中できるよう、教材やプリントを整理して使いやすい状況をつくってあげてほしい。早期から教材の量や整理方法を把握しておくことが、受験勉強本格化後のスムーズで効率的な学習につながります」

 子どもの学びに対する姿勢や理解のスピードは千差万別。だからこそ、3年生の段階で試しに入塾して様子を見極め、もし合わなければ2月で他塾へスイッチするという選択肢も含め、実際に通って相性を確認する「助走期間」としての意義は大きいと言える。

【四谷大塚】AI学習の継続活用で早期入塾者の学びを底上げ

 四谷大塚では現在、新4年生直前の2月、その前年の9月、そして新3年生直前の2月に入塾する生徒の割合がほぼ3分の1ずつとなっており、早期入塾の傾向が顕著だという。塾長の小川智弘氏によれば、新3年生直前の2月に入塾した生徒は半年間で3年生の学習内容を終え、後半を4年生への準備期間に充てる。

「中学受験勉強のカリキュラムは毎週、小学校の学習内容とは質も量も異なる内容が続くため、何の準備もなく新小4直前の2月から始めようとするとついていけず、苦労する生徒が多いためです」

 と小川氏はその背景を説明する。準備期間としての早期入塾を重視する一方で、同塾が近年注力しているのがAI(人工知能)を活用した学習サポートである。その代表格が「AIロボット先生」だ。同塾では組分けテストの成績に基づくコース分けにおいて、基礎レベルである「Aコース生をゼロにする」という目標を掲げ、動画授業「予習ナビ(Aコース基礎)」とAIを連動させている。これは具体的には「子どもがタッチペンでタブレットのパネルに直接、式や答えを自由に書き込むと、AIが単なる正誤だけでなく、生徒の解き筋やプロセスまで確認してチェックしてくれる」というもの。小川氏によれば、

「つまずいた際には関連動画へ自動で移行するなど、家庭教師が1人付いているかのような仕組みが整っており、Aコース生の減少や退塾者の歯止めに直結しています」

 さらに6年生の2学期以降は、AIが過去のテスト履歴から志望校の傾向と本人の苦手分野を教科横断で分析し、優先すべき問題を提示する「志望校別単元ジャンル演習」を導入しているという。指導者の勘に頼っていた部分に合理的な指標を定めることで、効率的な志望校合格への学習を可能にしているのだ。

【早稲田アカデミー】将来の糧となる「勉強を楽しむ姿勢」を小3で育む

 早稲田アカデミーも早期入塾を積極的に推奨しており、3年生の9月時点ですでに新4年生直前の在籍者の半数弱が通塾を始めている。教務本部長の竹中孝二氏は早期入塾の最大のメリットについて、

「知識やノウハウを一刻も早く詰め込めることではありません」

 と断言する。近年の入試問題は算数の長文化などに見られるように、知識のみで正解できるものではなく「入試会場のその場で考えさせる」傾向が強まっている。こうした問題に対応するには「勉強には楽しい要素がある」ことを身をもって知り、前向きに学習に取り組むことだという。

「カリキュラムに縛られない小3のうちから、将来の糧になる学びの土台を作っておくことが肝心なのです」

 そのため同塾の3年生カリキュラムでは、学ぶ楽しさやワクワク感を引き出す工夫が随所に凝らされている。算数ではトップブランド校舎の教材を用いて論理力を育むクラスを一部で立ち上げ、理科では実験のVTRを活用する。しかし、すぐに正解を見せるのではなく「なぜそうなるのか」を子どもたち同士でディスカッションさせ、思考を深める時間を重視しているという。社会科でも身近な問いから興味を広げる授業を展開し、算数では本来4年生で学ぶ「特殊算」に少し触れておくことで、後々「これはやったことがあるから大丈夫」と自己肯定感を高く持てるよう先取り学習も取り入れている。

「分からなくたっていい。みんなで一緒に考え、それぞれの考えを発表し、それを聞きながら考えを深めようというスタンスで、早い段階からスモールステップを積み重ねることが大切なんです」

 と竹中氏。早期入塾でも新4年生直前からの入塾でも、将来の学びにつながる「勉強を楽しむ姿勢」をいかに作るかを常に念頭に置き、全ての子どもたちへの徹底を目指している。

 有名塾のキーマンたちはいずれも早期入塾を推奨しつつ、口を揃えてそれが決して「知識の先取りや詰め込み」ではないということを強調していた。本格的な受験カリキュラムが始まるのは、あくまでも新小4直前の2月。そのスタート地点に向けていかに子どもたちの学習環境を整え、学ぶ楽しさや思考のプロセスをじっくりと育むか。そうした準備期間こそが早期入塾の本質である。そして四大塾にはそれぞれ、その「準備」のための学習スタイルに独自の哲学がある。「我が子の中学受験、どうしたものか」と考え始めている子育て世代の読者諸兄はぜひ、この夏の間にあらためて我が子の成長段階や個性を見つめ、どの塾にいつから通わせるべきかを見極めてほしい。

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 新潮QUEで配信中の記事【SAPIX】9月入塾で受験勉強の本格化に向けた「助走」を支える【四谷大塚】増える早期入塾――AI学習の継続で合格を目指す【早稲田アカデミー】早期入塾を推奨――小3は学ぶことの楽しさを引き出す重要な時期 では、それぞれの塾の特徴や最新の中学受験事情などを、より詳しくお届けしている。

デイリー新潮編集部

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