物価高の火元を放置しての消費税減税が 物価高のスパイラルにつながる明白な理由

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円安と物価高が加速する最悪のスパイラルへ

 もうおわかりかと思いますが、高市内閣は物価高対策をしていません。いや、物価がどんどん上がる経済対策を推し進めている、といったほうが正確です。

 筆者は「責任ある積極財政」は狂気の沙汰だと思っていますが、百歩譲って、どうしてもそれを試みたいなら、いったん円高に誘導し、物価を沈静化させたあとに行うべきです。金融緩和とセットの積極財政方針に、市場が厳しい視線向けているかぎり、円安は止まりません。つまり物価上昇は止まりません。「誤解だ」「大丈夫だ」と言い訳したところで、市場にダメだといわれてしまえばダメなのです。いまのままでは大規模投資が芽を出す前に、私たちが干からびてしまいます。

 干からびないように消費減税を、というのでしょうか。しかし、このように「物価高」の火元を放置して消費税を減税するのは、火に油を注ぎながら水をかけるようなもので、なんの効果もないでしょう。まず、これまでコストが上昇しても、十分に価格を上げることができず、さんざん苦しんできた業者は、減税を機にその分を価格転嫁するでしょう。店頭価格は思ったほど下がらないはずです。

 おまけに、日本の財政に対する市場の信頼は地に落ちます。現状、年間5兆円程度とされる消費減税の財源すら、まったく目途が立っていません。赤字国債に頼らない、とはされていますが、ではなにに頼るのでしょうか。日本の財政状況は、ただでさえ市場から危険視されているのです。その厳しい視線を無視して減税などすれば、それこそ市場から三下り半を突きつけられかねません。

 少なくとも円安と物価高が収まらなくなることはまちがいなく、そうなれば、7%や8%の減税効果などあっという間に消えて、借金だけが残ることになります。その結果、日本の財政はさらに信頼を失い、円安と物価高が加速するという最悪のスパイラルに入っていきます。

 もし高市総理が、支持率回復をねらって消費減税を断行するなら、一時的に自分への支持を増やすために国を売る、というにも等しいことだと思います。この期におよんでの消費減税は、私たちが干上がる道以外のなにものでもないことを、一人でも多くの人に理解してもらいたいと願います。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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