山形中学1年生マット死事件 “元少年”は「損害賠償を払いたくない」 被告の“逃げ切り”が可能な制度の問題点 別の“元少年”の母親は「本人に任せている」

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「まあ、払いたくはない」

『犯罪被害者代理人』の著者である上谷さくら弁護士が解説する。

「一般の人は、裁判所の命令があれば確実に賠償金が支払われると信じていますが、実情を説明するとあぜんとします。相手が一文無しであればそもそも原資がないし、不動産など財産を持っていても、名義が異なれば原則として差し押さえはできません。賠償金の回収の難しさは深刻な問題で、制度上“財産を持たない人やうまく隠している人が最強”なのです。犯罪被害者遺族の方々が“被告の代わりに国が支払って、国が被告から回収する”という制度の創設を訴えていますが、今のところ実現性はありません」

 では今回、改めて支払い命令を下された元少年は何を考えているのか。3人のうち、現在は会社員をしている一人を直撃することができた。すると彼は、

「まあ、払いたくはないですよね。逆に損害賠償請求したいくらいの気持ちです」

 開口一番、信じ難い言葉が飛び出した。

「だって、やってないのに“払え”ってくるんですよ。ただ、弁護士さんとも話したんですけど、やっぱり法律上は払わないといけない、差し押さえ来ますよって……。こちらとしては差し押さえに来てほしくないんですよ。だって、生活できなくなりますよ。でも、今の段階で“払う意思はない”みたいなこと書かれると、児玉さんをあおる感じになっちゃいますよね」(同)

元少年の母親は「どうすのかにゃあと思っでんだけんども……」

 また、3人のうち別の元少年の母親はこう言う。

「(賠償金を支払うかどうか)どうすんのかにゃあと思っでんだけんども、本人に任せてるから。収入がもう波あるもんだがらよ」

 子に代わって支払う気持ちの有無を問うと、

「だって本人が“やってねえ”って言ってるのに、それで払ったりしたら、やっぱり信じてねえなあって思うんだべねが。そこらへん、むずがしいんだべにゃあ」

 昭平さんの苦悩に比べると、やけに能天気に響く。

「死んだら有平に会えると考えていますから」

 喜寿である昭平さんの夢の中に、有平さんは頻繁に現れるという。

「僕は、なるべく長生きをして、有平の法要をするのが親の務めだと思ってきました。昨年は三十三回忌でしたから、あと6年、四十回忌の法要はしなくちゃいけない。一方で、死ぬのは怖くなくなりました。僕なんか満身創痍で、前立腺ガンで全摘出したし、心不全で入院したこともあります。だけど、死んだら有平に会えると考えていますから、いつ死んでもいいやとも思うんです」

 そして、こう力強く結ぶ。

「有平も、もっともっと生きていれば、いろんなことができたのに、彼はできなくなってしまった。ですから、今できることは先送りしない。自分が後悔しない生き方をしていれば、有平も喜んでくれるのではないかと思います」

 父の“戦い”はまだまだ終わりそうにない。

 前編では、昭平さんが明かした事件後の苦悩、少年7人への損害賠償請求訴訟を起こした理由などについて報じている。

週刊新潮 2026年7月30日・8月6日号掲載

INCIDENT拡大版「山形『中1マット死』で元少年に1.1億円支払い命令 被害生徒『父親』が語った“苦悩の33年”」より

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