山形中学1年生マット死事件 “元少年”は「損害賠償を払いたくない」 被告の“逃げ切り”が可能な制度の問題点 別の“元少年”の母親は「本人に任せている」
被告側から支払うという連絡はなく……
だが、いつまでたっても被告側から“支払う”という連絡は来なかった。
「当初、僕は時効のことなんて考えていませんでした。最高裁までいって、判決はいつまでも残るという感覚だったのです。ところが、判決からもうすぐ10年たつというときに、弁護団から“請求権の消滅時効を考えないといけない”と言われたんです。賠償請求権が時効で消えてしまったら、元も子もありません。裁判で得た結果が有名無実になってしまうのですから」
昭平さんたちは、請求権の時効を中断するべく、債権差し押さえを実施することに。
「探偵を使って勤務先などを調べました。結局、給与の差し押さえができたのが4人。この4人からは、毎年300万~400万円を回収していますが、残る3人は勤務先や財産が分からず、差し押さえできていません」
16年、請求権の消滅を防ぐため、昭平さんはこの3人に対して2度目の訴訟を起こした。前回と同じく賠償を命じる判決が出たものの、音沙汰なし。なすすべもなく時は過ぎていき、再び時効が訪れようとしていた昨年11月。改めて3人を相手取り、昭平さんは3度目の提訴に踏み切った。
「謝罪の言葉をかけられたことがない」
そして今年7月15日、山形地裁は昭平さんたちの請求をおおむね認め、3人に対して賠償金と遅延損害金、合わせて計1億1260万円の支払いを命じたのである。
「これまで僕らは裁判のために、印紙代や弁護士への報酬など数百万円は下らないお金を支払ってきました。一方、日弁連の活動資金があるため、被告たちは裁判に際して何も払っていないんですよ。でも、僕らが関心を持っているのは、年間いくら入ってくるかということではありません。有平が亡くなったことで失われたものを、お金に置き換えることなんてできないからです」
裁判の狙いは別にある。
「給与を差し押さえられれば、本人はその理由を意識せざるを得ないと思うんです。給与明細にどのように記載されるのか分かりませんが、毎月差し押さえが続けば、有平のこと、事件のことを思い出すのではないか。そしてそのたびに自分が何をしたのかと向き合ってもらいたい。僕らが抱いているのは、その一縷(いちる)の希望なんです。なにしろ、まだ一度も謝罪の言葉をかけられたことがありませんから」
とはいえ、被告の“逃げ切り”が可能となり得る現行の制度に瑕疵(かし)はないのか。
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