千鳥ノブも「吉田はバラエティを引き締めてくる」 37歳・女性芸人の“唯一無二”の立ち位置

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使い勝手の良い存在

 吉田は、いわゆる毒舌を売りにする芸人とは違って、誰かの欠点や弱点を一方的に攻撃するわけではない。彼女が主に問題にするのは、言動の矛盾、仕事への姿勢、ハラスメント的な言動などである。そのため、言い方はきつくても嫌な印象を与えない。視聴者にとっても、漠然と感じていた違和感を代わりに指摘してくれる頼もしい人物に見える。

 また、吉田は番組制作側にとっても使い勝手の良い存在だと考えられる。トークの流れが停滞すれば発言して動かし、出演者が内輪の空気に陥れば外側から切り込み、自分が標的になれば毅然とした態度で抵抗して笑いを起こす。

 さらに、恋愛や合コン、料理、健康管理、芸人仲間との人間関係など、本人が提供できるエピソードの幅も広い。「アメト――ク!」で吉田がプレゼンした企画が実現したことは、彼女が誰かにイジられるだけの存在ではなく、自らテーマを発信できる存在であることを示している。

 吉田のような芸人は、若手の段階ではなかなか評価されにくい。強い口調や細かい指摘は、キャラクターが浸透していないうちは、単に怖い、面倒くさいなどと思われがちだ。しかし、長い芸歴によって技術が鍛えられ、周囲の芸人たちとの関係性も蓄積されたことで、ようやく厳しさの奥にある人間味まで伝わるようになった。

 ここまでに時間はかかったかもしれないが、その遠回りによって、現在の吉田には若手には出せない厚みが生まれている。

 吉田がいま注目されているのは、毒舌だからでも、声が大きいからでもない。誰もが空気を読み、角の立たない発言を選びがちな時代に、彼女だけは空気のゆがみを見つけ、それを具体的な言葉にできるからだ。バラエティを引き締めながら独特の手法で笑いを生み出していく吉田は、今のテレビに足りなかったすき間を埋めてくれる貴重な存在なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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