20年の恋を貫いた結果…余命半年の妻は面会拒否、息子からは「ろくな死に方しない」 47歳夫の「こっちも覚悟の上だった」
「誰も僕らを止められない」
彼女の手をつかんで店を出た。そのままタクシーに乗ってホテルへ行った。麻由美さんは一言も声を発しなかった。彼もまた、何も言わなかった。
「もう誰も僕らを止められないはずだと思いました」
夢のような、だが嵐のような時間を過ごしたあと、彼は「家を出る。あなたもそうしてほしい」と言った。無理よと彼女は小声で言った。でも、もう会わないわけにはいかない。そう思ってるでしょと迫ると彼女は頷いた。
「息子は高校を卒業したら留学する予定なのと彼女が言うんです。だったら息子さんが家を出たタイミングで一緒に暮らそう、僕らはもうそうするしかない。本当にそう思いました。半年後に一緒に暮らす。それを夢見て準備を進めました」
社内預金を取り崩してアパートを借りる。どのあたりに住もうか。経済的には苦しくなるだろうが、ふたりで働けばなんとかなる。あてもなくそう思った。
麻由美さんの離婚
そして数ヶ月後、彼は借りたアパートにときどき泊まるようになった。仕事が忙しくて帰れないことが増えるかもしれないとそれとなく妻に伏線を張った。妻は「体には気をつけて」とだけ言った。
さらに数ヶ月後、麻由美さんが「家を飛び出してきた」と、息を切らしてアパートに到着した。離婚届は置いてきたが、夫がすんなり離婚するとは思えない。でも何があっても、もう私は動じないと宣言した。たくましくて美しかった。
「それからいろいろありましたが、5年かけて彼女の離婚が成立しました。逆に僕のほうが離婚できないままで。妻は頑なでした。もちろん調停、裁判と進めば離婚も成立すると思うけど、麻由美が『いいじゃない、このままでも』って。妻からはときどき息子の写真が送られてきたけど、おいそれと自宅に顔を出せないですよ。申し訳なくて。だから離婚を迫るのもやめたんです」
麻由美さんとの生活は、なんの不満もなかった。おさまるべきところにおさまっている安心感があった。昨年、彼女が60歳になったとき、彼はまだ46歳だった。「年上すぎて悲しい」と言ったが、彼自身はそれほど年の差を感じたこともないし、彼女のシワさえ愛していると面と向かって言った。
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