9年ぶりの隠し球はなぜ幻に? プロ野球であと一歩届かなかった“珍プレー&珍記録”

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 プロ野球には、記録として残るプレーと、記憶の中だけに残るプレーがある。

 思わず拍手を送りたくなる好プレーや快記録がある一方で、「まさか!」と目を疑うような珍プレーや、マニアックな珍記録が話題になるのも、プロ野球の醍醐味だ。なかには、成立していれば長く語り継がれたはずなのに、判定やわずかな結果の違いによって“幻”と消えたものもある。【久保田龍雄/ライター】

幻の隠し球

 9年ぶりの隠し球がリプレー検証でも覆らず、幻と消えたのが、2018年8月14日のヤクルト対巨人である。

 問題のプレーは、5回のヤクルト攻撃中に起きた。

 3対0とリードしていたヤクルトはこの回、1死一塁から山田哲人が左前安打を放つ。一塁走者・坂口智隆は二塁ベースを回ったあと、レフト・亀井善行が二塁に返球するのを見て、悠々セーフのタイミングで帰塁した。

 ここで二塁手のホルヘ・マルティネスが、マウンド上の内海哲也に返球したと見せかけるトリックプレーを仕掛けた。ボールを隠し持ったまま、坂口が離塁するタイミングを窺っていたのである。

 そして、坂口がベースを離れた瞬間、すかさずタッチに行った。完全に不意を突かれた坂口は、慌ててベースを踏み直す。その際、足が一瞬離れたようにも見えた。

 森健次郎二塁塁審の判定は「セーフ」だった。マルティネスは“隠し球アウト”をアピールし、高橋由伸監督もリクエストを要求した。

 リプレー検証では、直前に坂口が二塁へ戻った場面ははっきり映っていた。ただ、問題のタッチの瞬間を映し出したカメラは1台だけ。しかも、引き気味のアングルで肝心の部分がよくわからず、アウトと断定できる決定的な証拠はなかった。

 その結果、リクエスト制度のアグリーメントにある「確認できる映像がない場合は、ファースト・ジャッジを優先する」という原則が適用され、判定はセーフのまま変わらなかった。

 もし隠し球が成立していれば、2009年のオリックス・山崎浩司以来、9年ぶりの珍プレーになるところだった。しかし、記録には残らず、現在に至るまで山崎を最後に17年間、隠し球は途絶えたままである。

次ページ:気持ちは狙ってました

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。