9年ぶりの隠し球はなぜ幻に? プロ野球であと一歩届かなかった“珍プレー&珍記録”

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オレはセーフに見えた

 最後は、2019年6月6日のソフトバンク対中日で本当にあった“幻のランニング本塁打”である。

 8回に武山真吾の左中間ソロで4対4の同点に追いついた中日は、2死後、3番・大島洋平が右越えに本塁打性の大飛球を放った。

 打球はフェンスの最上部に当たって跳ね返り、グラウンドを転々とする。その間に大島は俊足を飛ばして三塁を回り、一気に本塁を狙った。

 カバーに走った二塁手・明石健志が懸命にバックホームし、本塁はクロスプレーとなる。土山剛弘球審の判定は「アウト」。直後、「オレはセーフに見えた。あのジャッジにビックリ」と納得のいかない中日・与田剛監督がリクエストを要求した。

 映像では、大島の右手が捕手・高谷裕亮のミットをかいくぐり、本塁ベースをタッチしているようにも見えた。高谷の最初のタッチは空タッチで、左肩へのタッチも大島がホームに触れたあとに見える。タイミングはアウトでも、大島の手が先にベースへ届いたように思われた。

 しかし、判定は覆らなかった。「映像を見て協議し、全員の判断です。変更に値する確証を得られる映像がなかった」(小林和公責任審判)という理由で、当初の判定どおりアウトになった。

 こうした場面では、得てして相手に流れがいってしまうものだ。

 その裏、ソフトバンクは2死二、三塁からグラシアルの中前適時打で勝ち越し。さらに2点目の本塁クロスプレーでは、当初のアウト判定が工藤公康監督のリクエストによってセーフに覆るという皮肉な結果となった。中日は4対6で敗れている。

 冒頭で紹介した“幻の隠し球”もそうだが、当事者がどれだけ確信を持っていても、その瞬間を映像がしっかりとらえていない限り、証拠不十分で却下されてしまう。

 「誤審を正す」という本来の目的に沿って、リクエスト制度をどう改善していくのか。その課題が残る限り、これからも“疑惑の判定”はなくならないだろう。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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