9年ぶりの隠し球はなぜ幻に? プロ野球であと一歩届かなかった“珍プレー&珍記録”
気持ちは狙ってました
プロ1号本塁打でサイクル安打達成という、いまだかつてない珍記録に挑んだのが、中日・谷哲也だった。
2014年6月29日の阪神戦、故障離脱した荒木雅博の代わりに2番・二塁で先発した谷は、初回に能見篤史から1イニング2安打となる左前安打2本を記録し、好スタートを切った。
プロ6年間で前年まで通算5安打の男にとって、これだけでも上出来だった。この日の谷は、そこからさらに打ち続ける。
3回の3打席目は左中間フェンス最上部を直撃する三塁打となり、チームの9点目を挙げる。5回の4打席目では逆風をついて右中間二塁打を放った。残るは本塁打だけ。当時、あと一発が出れば史上63人目、通算67度目のサイクル安打達成となるところだった。
これまで本塁打でサイクルを達成した選手は11人いる。谷がプロ1号本塁打で達成していれば、NPB史上初の快挙になるはずだった。
谷は7回の5打席目で四球を選び、9回1死二塁で運命の6打席目を迎える。
「狙っていけ! 人生変わるぞ!」
チームの先輩・和田一浩の激励を背に受けて打席に立った谷は、あえて信条とするコンパクトな打撃を捨て、一発狙いで榎田大樹の高め直球をフルスイングした。
少し力んだことが裏目に出たのか、打球は三飛。快挙は幻に終わった。
それでも谷は「詰まりました。ホームランは絶対に出ないけど、気持ちは狙ってました」と、チャレンジに悔いはない様子だった。
そして、因果は巡る。
1週間後の7月5日、巨人戦で今度は「人生変わるぞ!」と谷を激励した和田が、サイクル安打に王手をかけた。1打席目で三塁打、2打席目で二塁打、3打席目で本塁打を記録し、残るは単打だけとなったのである。
だが、待っていたのは思いがけない展開だった。4打席目、5打席目はいずれも死球。和田は「アマチュアから30年以上やってやったことがないし、思いどおりにいかないのが勝負」と、“幻のサイクル”に苦笑するしかなかった。
[2/3ページ]


