夏目雅子、池上季実子、十朱幸代、秋吉久美子、南野陽子…鮮烈な“男と女”を描く「原作・宮尾登美子」映画5選
姉妹の愛憎劇
〇「夜汽車」(1987年)
土佐の裏社会の抗争を背景に、姉妹が同じ男を好きになってしまう愛憎を描いている。
昭和10年、芸妓として各地を転々としていた露子(十朱幸代)は、16年ぶりに故郷の高知に夜汽車で帰ってきた。そして美しく成長した妹・里子(秋吉久美子)と再会する。やがて山海楼で働き始めた露子は、田村征彦(萩原健一)と愛し合うが、征彦はやくざ一家・田村組の息子だった。しかしあるきっかけで、里子と征彦が男女の仲になってしまい……。
十朱は「櫂」に続いてのヒロイン役だが、今作では困難な状況を1人で生き抜く勝ち気な芸妓を演じている。十朱は「櫂」の喜和のような薄幸で耐える女性が似合うような気がするが、恋人を取った妹を憎みきれない複雑な心理を巧みに演じている。
ここで注目したいのは秋吉久美子と萩原健一だ。この2人が川沿いを着物姿で歩くシーンは、まるで一幅の絵画のように美しい。そして、庭で征彦が里子の髪を洗い、里子が征彦の髭を剃刀で剃るところなど、古き良き時代を感じさせる場面はぜひ観てほしい。
1970年代、秋吉と萩原は「しらけ世代」「三無主義」と呼ばれた若者たちのアイコン的存在で、演じる役の鮮烈さから熱狂的なファンが多くいた。80年代になると2人は役の幅を広げ、秋吉は「異人たちの夏」(1988年)で母親役を、萩原は「竜馬を斬った男」(1987年)で幕士を演じ、俳優として新たな道を歩む。2人のファンだった60代の方にはお薦めの作品だ。
アイドル南野が挑む芸妓
〇「寒椿」(1992年)
宮尾登美子の原作は、売られてきた4人の娘たちが荒波に飲み込まれる運命をオムニバスで描いたものだ。映画は1人の娘と周辺の人間模様を中心に描かれる。
昭和2年、21歳の貞子(南野陽子)は女衒の岩伍(西田敏行)に買われ、高知の妓楼「陽暉楼」へ身売りされる。牡丹と名乗り、その美貌からたちまち1番の売れっ子芸妓となる。その牡丹に心を奪われた力士上がりのヤクザ仁王山(高嶋政伸)は、牡丹をさらって行方不明になる事件を起こす。
誰もが褒めそやす美しい牡丹を中心に、地元の選挙戦やヤクザの抗争が起き、岩伍は巻き込まれていく。岩伍役の西田はこの頃「釣りバカ日記」シリーズの“浜ちゃん”役や夜間中学の教師を演じる「学校」シリーズの教師役も好評だった。一転、ヤクザと対峙する女衒という全く違う役に挑戦している。
そしてなんと言っても南野の芸妓役だろう。南野は、ドラマ「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」(1985年-86年)で人気が沸騰し、歌手としてもヒットを飛ばし続け80年代後半のトップアイドルだった。90年代に入ると女優業に重きをおき、本作で初めての大胆シーンで世間を大きく騒がせた。同年公開のエイズに感染した女性が妊娠するという「私を抱いてそしてキスして」にも主演して、「寒椿」と合わせて日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。
トップアイドルだった南野の演じる、脆く儚げな芸妓姿をぜひ観てほしい。
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