夏目雅子、池上季実子、十朱幸代、秋吉久美子、南野陽子…鮮烈な“男と女”を描く「原作・宮尾登美子」映画5選

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 小説が原作の映画は世界各国で制作されているが、同じ作家の作品が次々と映画化され、作家名がジャンル化している国はそう多くない。特に日本はこの傾向が強く、昭和ミステリー作家の大御所陣をはじめ、近年もジャンル化する作家は増加中だ。今回はそのなかでも、遊郭・侠客・愛憎・歴史をテーマにした作品で知られる宮尾登美子さんに注目。鮮烈な印象を残した五社英雄監督作など5本を、映画解説者の稲森浩介氏が紹介する。

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夏目雅子の美しさ

〇「鬼龍院花子の生涯」(1982年)

 宮尾登美子の故郷である土佐の侠客社会を下敷きに、家父長制の下で抑圧される女性の生きる姿を五社英雄監督が映画化した。

 貧困家庭で育った松恵(夏目雅子)は、土佐の侠客「鬼政」こと鬼龍院政五郎(仲代達矢)の養女となる。冷たい性格の妻・歌(岩下志麻)からは辛くあたられるが、勉学に勤しみ小学校の教師となった。やがて、労働運動家・田辺(山本圭)に惹かれ一緒になる。

「あては鬼政の娘じゃき。なめたらいかんぜよ!」――喪服姿でこう啖呵を切る夏目の映像を見たことがある人は多いだろう。ここだけ観ると松恵は侠客一家の荒々しい女性のようだが、これは亡くなった田辺の分骨を拒否されて思わず出てきた言葉だ。

 普段は物静かな女性だけに、大きな感情を発露するこの場面は強烈な印象を残す。しかし流行語にもなったこのセリフは原作にはない。宮尾は「なめたらいかんぜよの宮尾さん」とずっと誤解されていたという(「別冊文藝春秋」2002年7月号)。実際は、五社監督が現場での口立てで夏目に言わせたらしい(日下部五朗『シネマの極道 映画プロデューサー一代』新潮社)。

 ドラマで注目されていた夏目は、本作でたちまちスター女優に。以降、「魚影の群れ」(1983年)や「瀬戸内少年野球団」(1984年)など今でも語り継がれる作品に出演したが、1985年、27歳で早逝。前年に作家の伊集院静と結婚したばかりだった。本作を見直してつくづくその美しさに感嘆するとともに、後の女優・夏目雅子を見たかったと思う。

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