女性への不適切行為、ギャンブルに1617億円…マスターズ3度制覇の米ゴルフ界「フェアウェイの貴公子」はなぜ道を踏み外したのか

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国民的スターの「失敗と転落」

 1991年に大学生のアマチュアにしてPGAツアー初優勝を挙げたミケルソンは「フェアウェイの貴公子」と呼ばれ、米国のファンを熱狂させた。プロデビュー後はタイガー・ウッズと並ぶ「ビッグ2」と呼ばれ、国民的スターと崇められた。

 メジャー初制覇までは時間がかかったものの、2004年マスターズで勝利して世界中を歓喜させた。乳がん治療を経た愛妻が弱々しい姿で見守る中、2010年に3度目のマスターズ制覇を果たしたときは、世界中が涙した。2021年全米プロを50歳で制したときは、世界中に勇気をもたらした。

 しかし、2017年にはインサイダー取引への関与が疑われ、試合会場にFBIの捜査官が乗り込んできたことがあった。

「痩せるコーヒー」を宣伝したり、全米展開のレストランチェーンの一部を買い取って経営に乗り出すなど、ビジネスに手を出しては失敗し、借金を増やしたと言われている。

 2021年にリブゴルフが創設されるやいなや、いの一番に移籍したのは、破格の移籍料を借金返済に充てるためだったと見られているが、移籍する以前も以後も、ギャンブルに溺れ続けていた。

ギャンブル依存症を告白

 インサイダー取引で逮捕されたラスベガスの大物ギャンブラー、ビリー・ウォルター氏は、5年の刑期を終えて出所すると、2023年8月に暴露本を出版。「この30年でミケルソンが賭けた総額は10億ドル(約1617億円)以上。賭けで負けた損失額は少なくとも1億ドル以上」と明かした。

 その翌月。ミケルソンはギャンブル依存症であることを初めて自ら公表。「僕は越えてはいけない一線を越え、ギャンブル依存症に陥った。ここ数年、プロの手を借りて治療に取り組んできた」と明かした。

 そして今年は、試合に姿は無く、聞こえてきたのはスキャンダルばかりだ。

 ゴルフ界の頂点で輝いていた選手が、ここまで堕ちてしまった原因に、お金や名声、欲望が含まれていることは想像に難くない。しかし、一連のミケルソン騒動をこうして振り返ってみると、人間は何がきっかけで様変わりするかわからず、思っているよりずっと弱い生き物なのかもしれないと、あらためて思わされる。

 気を引き締め、地に足を付けて生きるべし。教訓である。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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