「東京03」は「トウキョウレイサン」だったのに…NHKの「今後は“ゼロ優先”へ」がすべてのアナウンサーを震撼させた理由

  • ブックマーク

外来語と日本語

 日本語は外来語が入りやすい言語だと言われます。

 今、この原稿を書いているパソコン。もとは「パーソナル・コンピューター」という外来語をそのまま取り入れ、さらに長いから「パソコン」と簡略化した言葉を生み出して、今やだれもが使う立派な「日本語」になっています。

「0」についても、かなり昔から「ゼロ」と読むことに違和感がない人が大半だったと思います。

 例えば、第二次世界大戦における日本の代表的な戦闘機、「ゼロ戦」。正式名称は「零式艦上戦闘機」。読み方は「れいしきかんじょうせんとうき」ですが「れい戦」という人はまずいないでしょう。

 また、今回の変更を決定づけた大規模調査で明らかなように、電話番号と郵便番号の「0」については、全世代の90%以上が「ゼロ」と読んでいる実態をみれば、やっと実情に追いついたと言えると思います。

 私が勤務していた東海ラジオをはじめ、全国のラジオ単営局(テレビ放送はやっていない局)は、広告代理店が作ったCMの他に、自社でCM制作をすることが多くあります。

 実際にあった話ですが、私がCM収録の担当として、スポンサー立ち会いのもと原稿を読んだ際、フリーダイヤル「0120」を「れいいちにーれい」と読んだら「ゼロいちにーゼロ」と読んで欲しいという、クレームが出ました。ディレクターとともに「正しくは、れい、なのでゼロとは読めない」と、押し問答になったことがあります。

 内心「そりゃ、ゼロと読むのが普通だもんな」と思いながらも、放送では「れい」と読むことになっている以上、「れい」と読むことを認めてもらうしかありませんでした。

 一般の人からすると「ゼロ」でも「れい」でも、どうでもいいことだと思うかもしれません。しかし、「正しい日本語」を使うことが義務付けられたアナウンサーにとっては大問題だったのです。

 内心では「ゼロ」を容認しながら、それを否定せざるを得なかった経験があるアナウンサーからすれば、今回のNHKの変更は、それこそ今まで守ってきたものが急になくなって、体の力が抜けたような気持ちになった一大事件でした。

正しい言葉を使うために

 日常生活で「0」を「ゼロ」、「れい」どちらで読むかは、自然に皆さんがやっていることです。

 前述のように全世代の90%以上が電話番号や郵便番号では「0」を「ゼロ」と読む一方、テストの点数「0点」を「ゼロてん」と読む人はいないでしょうし、気温「0.2度」を「ゼロてんにど」と読む人もいないでしょう。

 にもかかわらず頑なに「0」は「れい」としてきたルールが、ようやくなくなったことで個人的にはホッとしています。

 しかし、時代とともに言葉も変化するとは言え、「食べれる」「見れる」といった「ら抜き言葉」のように、日本語の文法からすると明らかに間違った言葉があふれているのも事実です。

 NHKを筆頭に、「正しい日本語」をアナウンサーが使う意味はあると思います。それが誰にも違和感なく物事を伝えるために必要なことだと思います。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。