「嬢を“駒”として見ている自分に気づいた」キャバクラのボーイを経て就職。即プロポーズするほど好きになった3歳年上女性に見抜かれたもの
バブル崩壊で変わった大学生活
兄と姉は大学進学のために家を離れていったから、中学生以降は父母との3人暮らしとなった。手広く商売をしていたわけでもないのにお金の心配をしたことがなかったのは、父の一族がそのあたりの地主だったからだ。
「贅沢はしなかったけど、ほしいものはだいたい買ってもらえたし、兄も姉も大学時代はアパート暮らしをしていたみたいだし。僕も当然、大阪か東京の大学へ行くものだと思っていました」
東京の「そこそこの私立大学」に入学したが、2年生になったころ、父から「学費は払うが生活費の仕送りはできなくなりそうだ」と連絡があった。どうやらバブルが弾けた余波が地方都市にもやってきたということだったらしい。
「父は兄弟も多かったので、とんでもなく損した叔父とか失踪した伯母一家とか、いろいろあったみたいですね。僕らにはあまり知らされていなかったけど、あのころ両親はかなり苦労したみたいです」
実家が所有していた不動産が競売にかけられ、尚彦さんの家の前に怪しい男たちがたむろしていたとも地元の友人から聞いた。それでもなんとか借金もせず、父は商売だけは続けることができた。
「生活費は自分で稼ぐしかなくなりました。塾の講師とか引っ越しのバイトとか、いろいろな仕事をしたけど、いちばん長く続いたのはキャバクラの裏方です。最初は下働きだったんですが、そのうち、嬢たちの世話を焼いたりもめごとを仲裁したりするようになって。それが妙に楽しかったんですよ。人の欲望や悪意や、逆に本当の誠意や真心など、毎日、いろいろなものを見せられた」
キャバクラの裏方で見たもの
濃い人間関係もそこここで勃発していた。男に騙されて金をとられて落ちていく女もいれば、逆に男を踏み台にしてのし上がっていく女もいる。客と嬢、接客される側とする側との関係、そして店の戦略と客の攻防などが透けて見えた。
「店からは『きみには天性の人裁きの才能がある。うちに就職しないか』と誘われました。このままマネージャーになって、そのうち店の経営に携わるのもいいかなと思ったんですが、やっぱり水商売は浮き沈みが激しい。それにそういう仕事が長くなるにつれ、嬢を“駒”として見ている自分に気づいたんです。アルバイトのくせに経営者側の見方をして、なおかつ彼女たちをどう動かすかという目が強くなっていった。人としてどうよと思いました。だから悩んだ末、飲食チェーン店の本部に就職したんです」
[2/3ページ]

