どんどん減っている「純粋な」お笑い番組 大逆風の中、粗品「ツッコミスター」が異例の高評価を勝ち取ったワケ

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ツッコミを競技化

 この番組では、「色」や「数字」など、ボケではない普通のものがお題として提示される。そこにツッコミを放つことで笑わせるというのは、ツッコミがボケを兼ねているとも言える。このような形式でツッコミを競技化したのが画期的だった。

 優れたツッコミとは、単に大声で間違いを指摘することではない。何を拾い、どこを誇張し、どの言葉を選べば最も笑いが膨らむのかを瞬時に判断する、高度な編集作業なのだ。

 番組では、その能力をさまざまなお題によって分解し、競技として可視化した。これは「芸人を集めて面白いことをさせる」という従来型の番組とは異なる。普段は感覚的に受け取られている笑いを、ゲームのルールに落とし込み、視聴者にも技術の差が伝わるように設計していた。

 勝敗が決まる形式でありながら、完成された漫才やコントを披露するのではなく、芸人が目の前の状況にどう反応するかを競わせる。そこにはお笑い番組ならではの即興性と緊張感があった。

「有吉の壁」のレギュラー放送が終了することや、女性芸人限定のお笑いコンテスト「女芸人No.1決定戦 THE W」が今年は開催されないことなどが報じられ、テレビのお笑いは逆風にさらされている。そんな中で、純粋に笑いを追求した「ツッコミスター」が高視聴率を獲得して、業界内でも高く評価されているというのは、貴重な明るいニュースであると言える。

 もちろん、この成功によってお笑い番組が一気に増えるわけではない。ただ、粗品という人物の才能とリーダーシップを生かして、お笑い番組を新たに立ち上げて、それを軌道に乗せたことには意義がある。お笑い番組再生の鍵は、万人に嫌われない無難な番組を作ることではなく、誰かが自分の面白さを信じて、その基準に責任を持って番組を作ることなのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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