口汚い野次で退場者も…全米OPゴルフ最終日は前代未聞の「異様な雰囲気」 32歳の勝者を「完全に悪役」にした“数々の問題行動”とは

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「すべてが衰退していくようで最悪の気分」

 こうした一連の経緯を、クラーク自身はどう受け止めていたのか。とりわけオークモントのロッカーを破壊した後、彼が何を思い、どう過ごしていたのかが気になった。

「2~3日は、とても辛かった。暗闇の中に閉じこもっていた感じで、外出もしなかった。僕のキャリアも、世界ランキングも、評判も、すべてが衰退していくようで最悪の気分だった。あのときは、1年後に(全米オープンで優勝して優勝会見の場に)こうして座っている自分を想像すらしなかった」

 自身が出した声明通り、クラークはオークモントのロッカーの修理代を全額支払い、オークモントが行っているチャリティ基金に寄付し、「アンガー・マネジメントの講習も受けた」そうだ。

 しかし、巷では「クラークはロッカーの修理代をいまだに払っていない」等々、ネガティブな噂が絶えず、一度堕ちた信頼やイメージを修復することは簡単ではない様子だった。

事実を見てくれる味方の存在

 だが、ありがたいことに、被害を受けたオークモントに所属するクラブプロは、クラークのために、こんな証言をした。

「ウィンダム・クラークはロッカーの修理代をすでに全額支払った。そして、オークモントとUSGAが出した条件をすべて受け入れて、アンガー・マネジメントの講習を受けたり、メンタル・トレーニングを受けたりしている。ロッカーはすでに修理が完了し、従来通り、メンバーたちはエンジョイしている」

 そんなふうに、噂にとらわれることなく事実を見つめてくれる味方も居る中で、クラーク自身、心を入れ替え、頑張ろうと思えるようになったそうだ。

「2025年はパットが不調でとにかく苦しんでいた。オークモントでプレーしたころの僕は、まさにどん底で、僕は自分を見失っていた。本当の僕は、楽しくて明朗快活なんだ。ゴルフを愛し、ゴルフをリスペクトしているゴルファーなんだ」

クラークの心に染みた「山の話」

 オークモントのロッカー破壊騒動からのこの1年、クラークはスイングコーチを変え、相棒キャディを変え、ガールフレンドも変わった。全米オープン直前にはパターも変え、そのニュー・パターがシネコックヒルズのグリーンで素晴らしい働きをしてくれた。

 だが、ゴルフをリスペクトしているはずのクラークが、ロッカーを破壊する騒動を起こしてゴルフ界から呆れられ、それでも改心して再び全米オープンを制覇することができたのは、メンタルコーチであるジュリー・エリオンのおかげだという。

「クラークには、山登りの話が効果的だった」と、エリオンは振り返った。

 エベレストの頂上まで登ったとしても、そこから降りない限り、別の山に登ることはできない。「登って、降りて、また登る」話、「次の山を登るために、登った山を降りる」話は、クラークの心に染みたのだそうだ。

 ロッカーを破壊し、自己嫌悪に陥り、暗闇に閉じこもっていた彼は、2023年全米オープン制覇という高い山の頂きからの降り方を間違え、降りすぎて地下までもぐってしまったのかもしれない。

 しかし、「もう一度、山を登ろう」と心に決めたクラークは、地下から地上へ、地上から山頂へと、通常の2倍ぐらいの山道を、彼なりに必死に登ってきたのではないだろうか。

 クラークに野次が飛び続けたシネコックヒルズのサンデー・アフタヌーンは、前代未聞の全米オープン最終日となり、そんな中で勝利した彼は、前代未聞の全米オープン覇者だった。

 だが、彼の反省と努力、野次の嵐に耐え抜いた忍耐と精神力、そして高い技術も、前代未聞だったからこその勝利だったと私は思う。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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