駅のトイレから「トイレットペーパーを持ち帰る人」、実は少なくなかった…用具入れから持ち去られた疑惑も“犯人特定”が極めて難しい理由
駅のトイレを利用すると、「トイレットペーパーを持ち帰らないでください」という注意書きをよく目にする。公園や公共施設のトイレにも掲示されていることが多い。「持ち帰る」という穏やかな表現がなされているが、ストレートに言えば備品を「盗む」ことになるわけだから、れっきとした窃盗である。
しかしながら、筆者などはいつもこう考えてしまう。実際にトイレットペーパーを持ち帰る人などいるのだろうか、と。それだけに、地方のさるターミナル駅に勤務する現役の駅員A氏の言葉は衝撃的だった。何しろ、「最近になってますます“被害”が増えている印象を受けます。持ち帰りはトイレを利用するお客様に迷惑がかかるので、やめて欲しい」と言うのだから。【取材・文=宮原多可志】
【写真】誰が持ち帰っている? 駅トイレから忽然と姿を消すトイレットペーパー
駅員を悩ませる持ち帰り被害
A氏は、現在の駅に勤務する前、別の県にある、一日の利用者数が2000人規模のターミナル駅で勤務していた。その頃から、トイレットペーパーの持ち帰りの被害は絶えなかったという。なにしろ、朝に清掃スタッフがトイレに5個ほどストックしても、その日の昼にすべて無くなったことがあったというから驚きである。
「1日に数万人が利用する首都圏の駅であれば、お客様の使用でそれだけの量が消費されることも考えられます。ただ、いくらなんでもいま勤務する地方の駅で、これほどのハイペースはあり得ない。盗まれた以外考えられません」(A氏)
さらに、駅の利用者からの通報では、掃除用品などの備品が入っている物置を開けて、そこに保管されていたトイレットペーパーまで盗んでいったケースもあったという。物置は特段、施錠などはしていなかったそうだ。そして、被害があるたび、駅員にはトイレの利用者からのクレームが寄せられる。A氏がこう愚痴を吐く。
「“トイレに入ったけれど、紙がなかった! どうしてくれるんだ!”というクレームを何度もいただきました。掃除のスタッフはしっかりと補充して、定期的に駅員も巡回しているんです。それなのに、本部にクレームが入れられたこともあった。あまりに理不尽だし、窃盗は本当に許せません」
個室空間ゆえ犯人探しが難しい
しかし、トイレットペーパーの窃盗犯を捕まえるのは、かなり難しいという。トイレが密室であり、しかも施設の性格上、防犯カメラを設置することができないためである。それゆえ、誰が盗んだのかを特定するのが極めて難しい。また、トイレ事情は人それぞれである。
「もしかすると、ふだんから一度に紙を大量に使う人だっているかもしれませんし、その日に体調不良だったことも考えられますからね。実は、当駅では疑わしい人の目星はついているんです。しかし、安易に我々の判断で手荷物検査もできませんから、貼り紙で呼びかけるくらいしか対策のしようがありません。駅員は完全にお手上げの状態ですよ」
さて、A氏が異動してきた駅でも、相変わらず盗難被害は相次いでいる。地方の駅とはいえ、県庁所在地にある駅であり、定期券の利用者も旅行者も多い。そのなかから犯人を見つけるのは事実上不可能だろう。しかも、窃盗被害は減るどころか、悪化の一途をたどっているというのだ。
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