【泣ける映画5選】役所広司、山崎努、寺尾聰、浅野忠信、福山雅治…「父親」が抱く愛と悲しみ、家族の尊さ
父が忘れなかったこと
〇「長いお別れ」(2019年)
認知症の人と過ごす時間を「The Long Goodbye(長いお別れ)」と呼ぶ。長い時間をかけて、記憶やその人らしさが少しずつゆっくりと遠ざかるからだ。ある日、母(松原智恵子)から、父(山崎努)の70歳の誕生日会に家に帰ってきて欲しいと、姉・麻里(竹内結子)と妹・芙美(蒼井優)に連絡がある。姉妹が帰省すると、中学校校長も務めた厳格な父が、半年前に認知症になったことを告げられた。
2年後、父は芙美と友人の葬式に出席するが、大きな声で「あいつは死んだのか」と騒ぎ慌てて退席する。施設でみんなと童謡を歌っていた時に、いきなり前に出て指揮をするのは教師時代のことを思い出したのだろう。その後、症状は進み、スーパーで万引きして捕まるが、怒る店員に「そこに立ってなさい」と言うのも「先生」の姿だ。
どこかユーモラスな場面が多いが、冒頭とラストシーンの切なさに涙する人も多いだろう。認知症が進んだ父が傘を何本も持って遊園地にやってくる。ずっと前、雨が降ってきたので小さな娘たちを迎えに来たことがあるからだ。父を探しに来た娘たちは、メリーゴーランドに乗って嬉しそうに手を振る父を見る。大切な記憶は忘れられないのだ。
認知症には2度の別れがあるとも言われる。最初に自分や家族のことがわからなくなり、心の別れが来る。やがて、肉体的な終わりが訪れる時が2度目の別れだ。ゆっくりと進む別れのなかで一瞬一瞬を大切にしよう、そんな思いが伝わる作品だ。
エンドロールで泣く
〇「半落ち」(2004年)
横山秀夫のベストセラーを佐々部清監督が映画化。原作にはないエンドロールの1シーンで、これだけ泣かせる映画はないと評判になった。
現役警部の梶聡一郎(寺尾聰)が、アルツハイマー病の妻・啓子(原田美枝子)を殺害したと自首してきた。捜査一課の志木和正(柴田恭兵)の取り調べに対し犯行は認めるものの、自首するまでの2日間の行動については決して口を割ろうとしなかった。“空白の2日間”に何があったのか? やがて夫婦には、7年前に白血病で亡くなった13歳の息子・俊哉がいたことがわかる。
妻の殺害は認めるが、自首するまでの間、何をしていたかはどう説き伏せても言わない。だから“完落ち”ではなく“半落ち“なのだ。秘めたる思いを持つ人間を演じる寺尾聰に注目したい。妻に懇願されたとはいえ、殺害しなくてはならなかったいきさつ。息子を亡くしてから、徐々に心が壊れていく妻の姿。終盤は心に突き刺さる場面が続く。寺尾は最初に脚本を読んだ時、亡くなった妻と息子への思いをどんな風に自分に溶け込ませるか、まずそれを考えたという(「キネマ旬報」2004年1月下旬号)。
ミステリーなので、なぜ梶は2日間の行動を話さなかったかはここで触れないが、ラストの映像に全てがあると言って良いだろう。当時映画館で観た人は、エンドロールが流れ、そこに森山直太朗の主題歌がかぶさると号泣してしまったという。その後、館内が明るくなりとても困ったらしい。
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