東大ですら39位…「世界大学ランキング」で日本勢の順位が低いのには理由があった 中国勢の「論文水増し」だけじゃない歪んだ実態とは

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日本人研究者が背負うハンデ

 こうして日本勢の順位が振るわない背景にあるのが、「英語圏」および「大規模大学」に有利というランキング自体の構造だ。

 例えば、これらのランキングの根幹をなす重要な指標の一つに「どれだけ他の論文に引用されたか」というものがある。「他の研究にも引用されるような論文は価値が高い」という評価基準だ。

 しかしこの指標は、オランダのエルゼビア社が運営する「スコーパス」という巨大な論文引用データベースに依存している。これは、世界中の主要な論文と、それが他の研究者に何回引用されたかという膨大な記録を集めているものだが、2023年のUNESCOによる報告書「Open Science Outlook 1」では、こうした世界のデータベースの論文の85%が英語圏に偏在していることへの懸念が表明されているのだ。実際、データベースに登録される条件の一つに、論文のタイトルと抄録(あらすじ)が英語で書かれていることがある。つまり、日本の大学が日本語を用いて国内の医療体制や製造業に向けた有用な研究を発表しても、言語的なハードルによって登録されづらいのである。ゆえに発表した論文の数や引用された数が実際よりも低く評価されてしまうのだ。

 日本の研究者が英語ネイティブでないことがハンデとなっている側面もある。豪クイーンズランド大学の天野達也准教授が2023年の研究で明らかにしたのは「非英語圏の大学の若手研究者が英語の論文を書く場合、それが却下される頻度が約2.5倍も高い」という事実だ。論文が受理された後でも、英語の表記などを直す頻度が12.5倍にまで上がるとのこと。日本語ネイティブである我々日本人は、こうしたハンデを背負って戦っているわけだ。

「サステナビリティ」という指標は必要か

「規模のハンデ」も日本勢にとっては手痛い。

 研究者が100人しかいない大学と1000人いる大学では、明らかに後者のほうが発表できる論文数が多く、順位を押し上げる要因になるのだが、それを意識してか、QSは公表しているランキングデータに大学の規模も記載している。その分類はS(学生数5000人未満)からXL(学生数3万人以上)までという、洋服のサイズのような区分けだ。

 学生数が2万人台である東京大学や京都大学の分類はL(学生数1.2~3万人)。その点においても、4~5万人規模であるシンガポール国立大学、5~6万人規模である清華大学、北京大学などよりも不利といえるだろう。

 さらに、大学ランキングには、大学の本業(研究)とは関係ない指標が色々と混入している。代表的なのは、外国人の教員や学生の割合だ。このような指標では、シンガポールなど、海外に開かれた大学ほど有利だ。最近では、QSは「サステナビリティ(持続可能性)」という指標も取り入れており、これには研究内容だけでなく、キャンパスでの環境への取り組みなども含まれる。

 これらの項目は、社会的なニーズが高まっているのは確かだが、大学のランキング指標として必要かと言われると、首を傾げる人も多いのではないだろうか。特に近年は、大学側も志願者集めのPRとして世界大学ランキングを使うようになっている。ただ、学生が大学選びの基準として、外国人学生比率を考慮するケースは一部の国際系学部などを除いてごく稀だろう。純粋な名門校の「学力・研究力」を知りたい人にとっては、これらは順位を不透明にするノイズ(不純物)として機能している側面は否めない。

 ちなみに、必ずしも日本勢が不利な条件とはいえないが、QSもTHEも理工系の研究部門の強さに依存するランキングであることは、よく知られた話だ。理系の分野では、論文の執筆ペースが速く、1本の論文に数百人の共著者が並ぶことも珍しくない。また、論文を引用し合う文化も強く、これらが大学ランキングのスコアを底上げする効果を生む。逆にいえば、経済学など社会科学に強みを持つ一橋大学などは、どんなに実力があってもランキングでは評価されにくい構造になっている。

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