妻と結婚して30年。恋人とは交際24年。63歳夫が語る「ふたりがいないとバランスがとれない」
紗和さんとの出会い
妻と同じく3歳年下の紗和さんとは、仕事で知り合った。ある仕事で多数の企業と組むことになったのだが、そのひとつが紗和さんのいる会社だったのだ。紗和さんは、その企業のチームリーダーで潤之介さんとの打ち合わせ等も頻繁だった。
「最初から感じのいい人だなと思っていましたが、仕事が進むにつれてどんどん親しみが増していった。もちろん恋とはほど遠い感情でしたが、準備から始まって半年ほどかかったその仕事が終わったときは、彼女と会えなくなるのがさみしくてたまらなかった。あんな気持ちは初めてでしたね」
恋だと自分でも思った。中学生のときのような憧れの気持ちと、それを否定する気持ち、さらには大人の分別など吹っ飛んだ妙に純な気持ちが交錯して、日常が急に色鮮やかになったと語る。
「僕はまともな会社員だと自分でも思っていたから、仕事で知り合った人と恋に落ちるようなことはあり得ないと感じていたんです。だってめんどうなことになるのが見えているし、それだけは避けたかった。でも紗和に対しては、どうしても自分の気持ちを伝えたかった。フラれてもかまわない、自分が彼女を好きだということだけはわかってほしい。そんな強い感情に自分が負けました」
打ち上げの夜に…
みんなで打ち上げをした日、彼は一次会終了後にさりげなく「ちょっとだけふたりで行かない?」と誘った。ふっと顔を上げて彼を見た紗和さんの目に、妙に明るい光がともった。気持ちは同じだと彼は悟った。
「その日のうちにホテルに行ってしまいました。でもなにもしなかった。できなかったんです。あなたが大事すぎてと言ったら、『あなた、そういうタイプじゃないでしょ』とズバリと指摘された。ふたりで笑いました。できなくても気まずくならない。そんな女性、なかなかいませんよね。その日は夜中までホテルで話し込み、ふたりともまどろんで朝方、目覚めて、それからようやく結ばれたんです」
そのとき初めて、潤之介さんは彼女も既婚だと知った。なぜか独身だと思い込んでいたのだ。少し焦ったが、彼女は平然と、「独身みたいな働き方をしてるでしょ? うちはもう壊れてるから」と言った。
週末土曜日の朝、結婚してから初めて他の女性と関係をもち、家族が待つ家に帰った。もっとどきどきするかと思ったが、意外と落ち着いているのが自分でも不思議だった。おそらく、紗和さんへの気持ちが本気だったからだと潤之介さんは分析する。
「紗和とは前世できょうだいだったのではないかと思うほど似ているところがあるんです。たとえば会って『なに食べようか』と言ったあと、ふたりともすぐに『焼き鳥』とか『洋食』とか同じことを言う。居酒屋でメニューを選ぶときも、あ、僕もそれを頼もうと思っていたということばかりでした」
似ているところが多いと相手への親しみが強くなる。だがそれだけでは続かない。長くつきあうには違いを楽しむことも必要だ。ふたりには最初から自由に言いたいことを言いあえる雰囲気があった。似ているところを楽しみながら、違いも自然とわかりあっていった。
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