浜辺美波、竹内結子、小松菜奈、黒木華、有村架純…憂鬱な空の向こうに何かが見える「雨が印象的な映画」5選【梅雨の映画案内】
茶室で雨の音を聴くこと
〇「日日是好日」(2018年)
「雨の日は雨を聴く」。茶を点てながら五感で季節を味わう喜びと、ひとりの女性の24年間の心の成長を描く。
典子(黒木華)は、真面目だけが取り柄の、自分に自信がない20歳の大学生だった。ある日、母親から「お茶を習ったら」と勧められ、従姉妹の美智子(多部未華子)と茶道教室の先生を訪ねる。その先生は大きな家にひとりで暮らし、“タダモノじゃない”とうわさの武田(樹木希林)だった。樹木が演じる先生が面白い。挨拶もそこそこに稽古を開始し、茶室に入る時は左足から、畳一帖を六歩で歩き七歩目で次の畳へと、そんな所作を戸惑う2人に淡々と教え込む。
静謐な茶室には、小暑、白露、立冬、大寒とうつろう季節の気配が流れてくる。やがて2年が過ぎた。美智子は就職して稽古をやめてしまったが、典子はアルバイトをしながら続けていた。夏至に雨が降っている。典子は雨音を聴いて「梅雨と秋雨では音は違う」と初めて感じることができた。季節や年月とともに典子の心の変化が描かれる。世の中はどんなに変わっても、茶を点てる時に感じる自身の心は変わらない。そんな穏やかな気持ちにさせてくれる作品だ。
この作品は樹木の亡くなった1カ月後に公開された。初共演の黒木は樹木を以前からかっこいい女優さんだと思っていたという。「きちんと年をとることをしてきた人の美しさが、自然と出ていらっしゃるのだと思います。こういう役者になりたい、そんな人間になりたい」と語っている(「キネマ旬報」2018年10月下旬号)。
雨と映画と禁断の恋
〇「ナラタージュ」(2017年)
これほど物語と雨が結びついている作品はないだろう。雨は単なる情景描写ではなく、登場人物の感情を表し、観るものの心にも深く刻む役目を果たしている。
「雨の音や匂いで、あの頃の感覚が蘇ってくる」という泉(有村架純)のモノローグとともに、かつて思い悩んだ日々の回想(ナラタージュ)が始まる。大学2年生の時、泉は、高校時代に淡い思いを抱いていた教師・葉山(松本潤)と再会する。かつて、気持ちを伝えられないまま卒業した泉は葉山への思いが再燃する。
高校のクラスで行き場がなく一度は死を決意し、激しい雨が降る屋上に立つ泉。そこで声をかけて救ってくれたのは葉山だった。泉が映画を観た後外に出ると雨が降っていた。そこで傘を差し出したのも葉山だった。泉の感情が揺れ動く時、いつも雨が降っている。
雨とともに物語にアクセントを与えているのが映画作品名だ。映画館で出会った日にかかっていたのは、ビクトル・エリセ監督の「エル・スール」、泉が1人で観る映画は成瀬巳喜男監督の「浮雲」。「浮雲」のラストは激しい雨の中、劇的な幕切れを迎えるシーンが有名だ。映画は雨とともに2人の感情の媒介を果たしているのだ。
有村は本作で好きな人の気持ちを掴めず、悩む日々を演じた。当時の舞台挨拶で「今まで正統派の役が多かったので、こういう作品の色や役柄は初めてでした。選んでくれて嬉しいです」と語っている。有村にとって、俳優人生のエポック的な作品だったのだろう。
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