「ほ、死んだですか。よい信者でした」 27歳女性変死「疑惑のベルギー人神父」が見せた“不可解な言動”【昭和の未解決事件】
「英字の東京地図をコピーして送った」
高井戸署の刑事2人は、キリスト教布教図書の出版事業を手掛ける「ドン・ボスコ社」本部を、杉並区の教会に訪ねた。対応したのはP神父とD神父、そしてルイ・ベルメルシュ神父である。
当時38歳のベルメルシュ神父は、ベルギーで農家の長男として生まれた。カトリックの司祭(神父)を志し、昭和23年に来日。調布市の神学校で学び、昭和28年に司祭の資格を得た。事件当時は「ドン・ボスコ社」の副社長で、主に会計を担当していた。
2人の刑事が手紙について質問すると、ベルメルシュ神父は「Tさんは知っている。よい信者でした。手紙は私が出しました」と答えた。加藤氏はこの“初対決”に同行していないが、記録されたやりとりを克明に記憶していた。
刑事「何を送ったんですか?」
ベルメルシュ神父「Tさんと会ったとき、地図を送ってくれといわれたので、英字の東京地図をコピーして送った」
刑事「いつごろTさんに会ったのですか?」
D神父「ベルメルシュ神父が留守のとき、Tさんから電話があったので、帰って来たときそのことを話すと、その翌日の3月3、4日ごろ、また私とベルメルシュ神父のところに電話が掛ってきた」
ベルメルシュ神父「Tさんから、ロンドンから帰ったら会いたい。明大のところへ来てくれといってきたので会った」
刑事「いつごろ、どこで会って、どんな話をしたのか?」
ベルメルシュ神父「電話のあった日の午後5時ごろ、自動車を運転して明大前まで行き、道路で会った。車の中や道路を歩きながら、Tさんはロンドンに行ってきてうれしかった、会社(BOAC)の関係で地図がほしいといったので、書いてあげる約束をして、3月6日ごろ送った」
驚かずに「ほ、死んだですか。よい信者でした」
この刑事との会話には引っかかる部分があった。
〈このやりとりの間に、ベルメルシュ神父が「Tさんがどうかしたのか?」と聞くので、刑事の1人が、「Tさんが死んだ」と話すと、別に驚いた様子も見せずに、「ほ、死んだですか。よい信者でした」と、何回も繰り返していた〉
そしてもうひとつ。
〈「どこでTさんと知り合ったのか」と聞くと、「乳児院へ話しにいったとき知り合った」と、素直に答えた。が、「あなたはどこに住んでいるのですか?」と聞くと、「この2階です。アリバイですか」と答えている〉
ただし、この段階での神父は容疑者として浮かび上がっていなかった。
〈しかし、捜査本部に帰って来た刑事は、「あの神父、なんとなくニオうな」といっていた〉
捜査本部はほどなく、Tさんが〈隠れて付き合っていた相手〉はベルメルシュ神父であるとほぼ確信した。その根拠は数々の“状況”にあった。
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一方では、神父のスケベぶりが耳に入ってきた――。第2回【茶も飲まず…27歳女性変死「疑惑のベルギー人神父」が任意出頭で見せた“異様な用心深さ”【昭和の未解決事件】】では、ベルメルシュ神父に関する女性絡みの噂や、最後に残った謎などについて伝える。



