「ほ、死んだですか。よい信者でした」 27歳女性変死「疑惑のベルギー人神父」が見せた“不可解な言動”【昭和の未解決事件】
血液型A型またはAB型の男と
検視の結果、死亡推定時刻は3月10日の午前5時ごろ。Tさんの上司にあたるBOAC営業部長とその妻は、Tさんが叔父の誕生日祝いで3月8日の午後3時ごろに外出したと証言した。
〈さらにわかったことは、Tさんがカトリックの信者であることと。前年の12月にBOACの客室乗務員試験に合格して、1月11日からロンドンで講習を受けるためにイギリスにわたり、2月27日に帰国したばかりということでした〉
そうした経緯もあり、上司夫妻はTさんが自殺する原因など思い当たらないという。
〈確かに自殺はおかしいと考え、死因を究明するために、当初は行政解剖をする予定でしたが、急遽、司法解剖に切り替えることにしました。解剖の結果では、首を圧迫されて窒息死したか、首に何らかの外力が加わってショック死したか、どちらかの疑いが濃厚になりました。つまり、たとえば腕で首を絞めたのではないか、ということでした〉
Tさんの体内と下着から検出された体液により、3月8日以降に血液型がA型またはAB型の男と関係を持ったことも判明した。つまり、同日の午後3時ごろに外出した以降である。そこで捜査本部は、この関係した男が事件のカギを握ると考えた。
〈秘密の交際〉の気配
Tさんが外出した際に持っていたコートとハンドバッグ、折り畳み傘は現場から100メートル以上離れた橋の近くで発見された。
〈さらに、被害者の遺体解剖の結果、胃の中から中華料理を食べた形跡が明らかになった。それも、松茸の入った中華料理でした〉
捜査班は松茸を使う中華料理店を絞り込み、松茸の切り方から杉並区天沼の「北京料理 荻窪池畔亭」(現在は閉店)に目星をつけたが、聞き込みの結果は芳しくなかった。だが、他の聞き込みにより、遺体発見日の朝5時頃、現場付近で白っぽいルノーの乗用車が目撃されていた。
捜査本部はTさんの過去にも手がかりを求めた。兵庫で生まれたTさんは、生後間もなくカトリックの洗礼を受け、短大入学のため上京。卒業後は地元に戻り看護師となったが、患者男性との結婚を両親に反対され、再上京していた。客室乗務員の試験を受ける前は中野区の乳児院に勤めたが、異性関係は華やかだった。
〈それにしても、私がびっくりしたのは、カトリック信者として乳児院に勤めている女性にしては、いやに男性関係が多いな、ということだった〉
そこに捜査本部は〈秘密の交際〉の気配を感じたという。その糸口の1つは、足取りがわからなくなる前日、7日の午前9時ごろにTさんが受け取った速達郵便だった。差出人は「ドン・ボスコ社」である。
〈内容まではわからなかったが、手紙をTさんに渡した上司夫妻の話によれば、Tさんは「ドン・ボスコ社」という差出人のところを読むと、一瞬、顔色が変わったようで、さっとハンドバッグにその手紙をしまったという〉
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