高校野球「7イニング制」の根本的な矛盾…“猛暑対策”が理由なら“炎天下の甲子園”での開催にこだわるのはなぜか

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メインスポンサーの意向

 投手の投球過多については、球数制限など他の方法で対策を講じることができる。

 もうひとつは、最終的な決断は誰がするのか? 世論の形成や報道の主な役割を夏の甲子園の主催者つまり当事者である朝日新聞が担っているという日本スポーツ界の不思議だ。

 この件について、朝日新聞社はかなり身を切るような報道もしている。5月23日、朝日新聞に慶應義塾高校野球部・森林貴彦監督の提言を掲載し、話題になった。曰く、

「本当に7イニング制が必要だったら断行しなきゃいけないと思っています。ただ、順番として先かというと、賛成ではありません。そもそも私は、「夏に甲子園球場で全国大会をやる」という最終報告書の前提から議論すべきだと思っています」

「今後100年間、炎天下の甲子園で全国大会を続けることを本当にイメージできますか。どこかで変えるべきで、その時期がもう、今、来ているのではないでしょうか。熱中症警戒アラートが出て、テレビには外出を控えるようにというテロップが出ている。あまりにも矛盾が大きい。だから、夏でいいのか、甲子園という場所でいいのか。本格的な検討をしてもいいと思います」

 こうした提言を朝日新聞が発信したことに一定の意義はあると感じる。だが、ならばこの先に歩を進め、7イニング制への移行より、時期と球場の変更を優先すべきではないだろうか。その意志がないのであれば、朝日新聞に載った森林監督の金言も「ガス抜き」に使われたと感じられても仕方がないだろう。

 5月30日の意見交換会に出席した同志社大学政策学部教授の川井圭司教授も同様な指摘をしている(サンケイスポーツ、6月1日)。

「『高野連というのは特殊な意思決定構造があるのは皆さんもご存じの通りで、メディアが入っているところが一番特徴的。メディアとともに高校野球がここまで社会の文化としてやってきた』

 指摘したのは朝日新聞社や毎日新聞社が全国大会などの主催者として高校野球文化を作り上げる役割を担ってきた事実だ。今回検討されているテーマについては(1)野球の本質にかかわるルール・制度の変更(2)野球を伝えるもの(大会・事業)の仕組みの変更、の2点が混同しており『誰が7回制移行に向けた判断を下すのかがちょっと不透明なところがある』」

 サンスポは次のように続けている。

「川井教授はまた、『現場で7割の方が反対されているにもかかわらず、これが進んでいることに対して単純に関心がある。なぜこういう意思決定が可能なのか。かつ、こういう意思決定が適切なのかというところも含めて』と引き続き経過に注目していく考えを示した」

 高校野球の根幹に関わる決定を、夏の大会の事業主体である民間企業が担っている。日本高野連もメインスポンサーである新聞社の意向に影響され、高校野球の総本山としての矜持を強く示さず大会運営にあたっている。

 今後もそれでいいのか、7イニングへの移行は、実はその根本が問われている。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集部

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