ウェディングドレスにも棺にも 南太平洋フィジーの“布のような紙のような”伝統が息づく暮らし

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ウェディングドレスに使われることも

 私にとっての旅の醍醐味は、「市場」を訪れることだ。広い市場に食材がひしめき並ぶその景色は、フィジーの胃袋の中そのもののように感じる。色とりどりのスパイスから立ち昇る匂い。隣の売り手と競い合うように限界まで高く盛られた野菜たち。活発な胃袋の景色が見えてくる。

 その市場の中に、タパを見つけた。折り畳まれたタパが何枚も積み重なり、そしてぶら下げられて売られている。市場で当たり前に売られている、ということはフィジアンたちにとってタパは日常的なものなのだろう。

 でも、いったい何に使うのだろうか?

 恰幅のいい売り場の女性に聞いてみると、タパを胸に巻き付けて、

「こうやってウェディングドレスにするの」

 と教えてくれる。

 紙のような肌触りのものを衣服にすると聞いて、神秘的な違和感と共に疑問が湧いてくる。

「洗濯はできるのですか?」

「いいえ」

 という答えが返ってきた。

「これは洗えません。使った後は大切に畳んでしまっておいて、また次の時に使うのよ」

 その他にもお葬式の時に棺に掛けたり、人生の節目にタパは欠かせないという。なるほど、日本でいう着物に近い感覚なのだろうか、と思っていると、どうやらもう少し生活の中に自然に入り込んでいるようだ。

 例えば、私の娘は16歳を迎えた少女からホームパーティーに招かれた。主役の少女はタパのスカートを穿き、タパの敷物の上に座り、部屋の壁にはタパが掛けられていた。想像以上に、タパ、タパ、タパなのだ。

 少女は一日タパのスカートを穿き、いつもと同じように立ったり座ったり身軽に動く。タパは明らかに「伝統衣装」としてではなく、16歳の少女と一緒に呼吸して、一緒に生きてゆくのだ。

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