「救急車が来ても、病院が決まらない」 東京の住宅選びで見落とされる“医療圏”
ボトルネックは「病院調整」の時間
東京の救急医療は、いま何に時間を失っているのか。多くの人は、「救急車が現場へ到着するまで」の遅れを想像するかもしれない。道路渋滞や出場件数の増加も確かに影響している。
ただ、データが示す現実は異なる。実際に大きく延びているのは、その後の時間、すなわち救急隊が患者を乗せたあと、どの病院へ搬送するかを調整する時間なのだ。
東京消防庁の統計を見ると、2019年には、119番通報から救急隊が現場へ到着するまで平均10分26秒だった。それが2024年には13分12秒まで延びている。
深刻なのが、「現場到着から現場出発まで」の時間で、2019年は21分05秒だったものが、2024年は27分19秒と、6分以上も増加している。なお、病院へ向けて出発してから到着するまでの時間も、10分22秒から11分45秒へ延びている。
この変化は、単純な交通渋滞だけでは説明しにくい。高齢患者の増加による現場対応の長時間化など複数の要因が考えられるが、搬送先との調整が影響しているのではないか。
東京には大学病院や大規模病院が多い。しかし、医療資源が多いことと、「短時間で搬送できる」ことは同義ではない。都心側に病院が集まる一方、人口を抱える住宅地側では救急要請が増えている。そうした需給バランスの偏りが、搬送時間の長時間化に影響している可能性があるのだ。
区単位では動かない「医療圏」という仕組み
それでは、東京の救急医療は、どのような単位で動いているのか。多くの人は、「自分の区の病院へ運ばれる」と考えているかもしれない。しかし実際には違う。東京の救急医療は、行政区とは別の「医療圏」という単位を前提に運用されている。
例えば世田谷区は、渋谷区・目黒区と同じ医療圏で救急医療が動いている。杉並区も、新宿区・中野区と同じ医療圏だ。病院分布を地図上に重ねると、東京23区の配置には偏りが見えてくる。都心側の一部エリアでは、二次救急を担う病院密度が比較的高い。一方、人口を抱える住宅地側では、病院配置が広域に分散している。
夜間救急を考える場合、「どの区に住むか」だけではなく、「同じ医療圏のどこに病院があるか」が重要なのである。
例えば世田谷区は人口規模そのものが大きく、渋谷区・目黒区と同じ医療圏で運用されているため、救急需要は医療圏全体で重なり合う。杉並区では、新宿区・中野区と同じ医療圏であり、医療圏内には大学病院も存在するが、病院配置は新宿側へ寄っている。
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