「ゾンビたばこ」使用に“爆弾証言” 「羽月隆太郎」と「広島カープ」が失ったもの 「新井監督」が信頼した“有望選手”はなぜ転落したのか
新井監督の期待
新井監督が羽月に対する期待と信頼度の高さを示したのが、2024年7月4日、本拠地で行われた阪神との首位攻防戦である。
3-3の同点で迎えた8回、小園が右前打で出塁すると、新井監督はすかさず羽月を代走に送った。
チーム2位の7盗塁を記録している小園に代えての起用。見ていて少々首を捻りたくなった矢先、羽月は4度のけん制にも動じず、1死から初球に二盗。阪神のリクエストにもセーフ判定は覆らず、四球を挟んで次打者の初球で三盗を決めた。経験豊富な選手でもためらいがちな早いカウントでも、羽月は迷うことなくスタートを切り、成功させた。
ここからカープに流れが傾き、2死満塁から初球スライダーが暴投になると、羽月が猛然と本塁に滑り込む。計3度のヘッドスライディングで勝ち越し点をもぎ取った。これで勝ち越したカープはこの回、一挙4得点を挙げて阪神を突き放した。
試合終了後、われわれ報道陣が待つベンチ裏の廊下に出てきた羽月のユニフォームは泥だらけ。右胸のあたりが破れ、アンダーシャツがのぞいていた。羽月がここでも強調していたのは、やはり「準備」である。
「(阪神・捕手)梅野(隆太郎)さんがやった(投球を弾いた)のを見て、スタートを切れた。最高の準備ができていたから、体が勝手に動いたんです」
「最高の準備」をしていれば、リスクの高い状況であっても、足も体も勝手に動く。この頃の羽月はいわゆる「ゾーン」に入っていた。
そんな羽月を、新井監督も手放しで絶賛している。
「あそこ(8回)は(先発投手の)森下(暢仁)に勝ちを付けてあげたいので、思い切って羽月に勝負をかけました。よく二盗、三盗と、勇気を持ってスタートを切ってくれた。素晴らしい走塁だった。
羽月にはすごい成長を感じますね。練習での取り組む姿勢、打撃もそうだけど、練習に対する取り組み方も去年とはガラッと変わった。こっちはそういうところを見ていますから」
熱っぽくそう語る新井監督の口調からは、羽月との間に揺るぎない絆が築かれつつあるように感じられた。あの勢いのまま、羽月が今もカープにいれば、Bクラスに低迷する中でどれだけチームを救う走塁を見せてくれただろう。
「関係者」の通報
羽月自身の法廷証言によれば、彼は2025年の開幕直後からゾンビたばこを常用するようになった。
羽月はこの年、自己最多の74試合に出場、31安打、17盗塁、打率2割9分5厘、出塁率3割7分3厘とキャリアハイの結果を残した。この好成績が、シーズン中から使っていたというゾンビたばことどう関係しているかはわからない。
羽月の逮捕は、昨年末の「関係者」の通報がきっかけだった。その裏には、使用をやめるよう何度も説得していた家族の意向もあったという。入団時から助言を送ってきた母親の言葉も、常習性のある指定薬物にだけは通じなかったのか。
すでにカープとの契約を解除され、判決が下り、社会的制裁も受けている以上、これから羽月が「自分の言葉」で何を語ろうと自由だ。
ただ、羽月がゲームを動かし、カープに勝利をもたらした鮮やかな盗塁は、カープファンの記憶の中に残っている。羽月を知らなかったファンも、ネットを検索すれば様々な動画を見ることができる。
まだ初犯で26歳。選手時代の輝きに自ら泥を塗ることなく、新たな人生を歩んでほしい。誰よりも心を痛めているだろう母親を、これ以上悲しませないためにも。
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