「ゾンビたばこ」使用に“爆弾証言” 「羽月隆太郎」と「広島カープ」が失ったもの 「新井監督」が信頼した“有望選手”はなぜ転落したのか
コックローチ・ベースボール
一躍、広島の人気者になった羽月が、他球団のファンにも知られるようになったのは、2023年10月14日クライマックスシリーズ(CS)、DeNAを本拠地に迎え撃ったファーストステージ第1戦だった。
1-2と1点ビハインドの8回、無死から代走で出場した羽月は、送りバントで二進。1死二塁とすると、エース東克樹が次打者・菊池涼介に初球を投じるや、物の見事に三盗を決めた。スタンドが大きくどよめいた直後、菊池がスクイズバントで羽月が同点のホームイン。ここからゲームの流れが一気にカープに傾き、9回のサヨナラ勝ちに結びついたのだ。
羽月の三盗はこの年のシーズンオフ、地元メディア各社の振り返り企画で取り上げられた。NHKのインタビューに、羽月は胸を張って答えている。
「あの場面では、初球の前に二塁にけん制してくることは絶対にないと思っていました。あの(東、山本祐大捕手)バッテリーは、代走の選手が送りバントで二塁へ進んだら、初球の前にけん制をしたことが一度もないんです。僕が見た映像では一度もありませんでしたから」
こういうことは“企業秘密”として口にしないものなのに、あっけらかんと打ち明けているところが羽月らしい。モノマネの巧みな人間は観察眼に優れている。芸人やタレントのモノマネが得意な羽月は、相手バッテリーのクセと傾向もしっかり観察していたのだ。
投手を攪乱し翻弄する羽月の走塁を、当時DeNAに在籍していたトレバー・バウアーは、自身のYouTubeチャンネルで「コックローチ・ベースボール」と揶揄した。意味するところは、ゴキブリのようにチョロチョロ動き回る目障りな選手。サイ・ヤング賞を獲得したほどの投手にこんな嫌味な悪口を言わしめたのも羽月くらいだろう。
ちなみに、2年後の2025年には、やはりDeNA・東が登板した試合で、阪神・近本光司も二塁から初球で三盗を決め、これが決勝点に結びついた。近本と阪神首脳陣は詳しい言及を避けたが、2年前の羽月の三盗が大きなヒントになった可能性はある。
羽月は単なる代走要員ではなく、ムードメーカーであり、「持っている」選手だった。彼の盗塁はただ一つ先の塁を盗るだけではなく、チーム全体を勢いに乗せる効果があった。加えて、ベンチ裏で得意の芸を披露すれば、チームが盛り上がった。そんな羽月の存在価値を、新井貴浩監督も認めていたはずだ。
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