“コミケの女帝”と呼ばれたイラストレーター「七瀬葵」が語り明かす…90年代コミックマーケット「伝説」と「騒動」の真相

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コミケは貴重な表現と発表の場

――お話を聞いていると、愛情をもって同人誌を作っていたからこそ、ファンから支持を集めたのだとわかります。

七瀬:ナコルルが大好きだったし、純粋に、好きな作品の同人誌を作るのは楽しかったですね。あと、当時はまだネット環境がありませんでしたから、コミケは自分の絵や作品をたくさんの人に見てもらえる貴重な場でした。だからもう必死というか、とにかくできる限りのことをやりたいと思って、頑張って本を作っていました。

――同人誌即売会から商業デビューした作家は、CLAMPさんや高河ゆんさんなど、たくさんいらっしゃいます。七瀬先生もそういった作家の一人ですよね。

七瀬:私、CLAMPさんとか、高河ゆんさんと世代がほとんど同じなんですよ。それに、同人誌を出されていた時代も知っていますから、商業デビューしたのを知ってすごいなあと思っていました。なので、私にとってのコミケは、もちろん好きなものの発表の場でもあると同時に、プロになる近道だと思って取り組んでいた部分もあると思いますね。

 余談ですが、当時の私は家庭で旦那との間で騒動に見舞われていました。そもそも私は専門学校に進んでアニメーターになりたかったのですが、21歳で結婚、専業主婦になっています。私が同人誌の原稿を描いていると、旦那から「食事はまだか」と催促され、「お前が絵なんて描く価値があるのか」と言われていました。

――好きという感情だけではない、複雑な事情があったわけですね。

七瀬:「金にならない絵ばかり描いて家事を疎かにしている」なんて言われたら、そりゃ同人誌の売り上げを見せて殴り返すしかないわけですよ。旦那を見返すために必死に絵を描いて、本を作っていましたし、それが同人活動の原動力になっていた面はあると思います。その後、漫画の連載を本格的に始めるために、旦那とは離婚したのですが。

 だから、本来の同人活動はそこまで頑張らなくてもいいんです。今の私ぐらいの規模で気軽にやるのが、健全な姿かもしれませんね(笑)。

 第2回【“AI堕ち”とボコボコに叩かれたイラストレーター「七瀬葵」…それでも「コミケから生成AIの創作物を排除しちゃダメ」と語る理由】では、コミケの女帝と言われたカリスマイラストレーター・七瀬葵氏が、生成A Iを使用したイラストを発表した経緯について、またそれに対する反響・批判に対する現在の心境、思いについて語っています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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