「愛子天皇」を実現させるべきではない“根本的な理由” 「世論調査」の結果で「皇位継承」を論じる危険性を、憲法学者が語る
移ろいやすい世論
――なぜ、愛子天皇の実現には問題があると主張するのでしょうか。
愛子様は本当に素晴らしい成年皇族になられました。ご公務も立派にこなしておられます。しかし、愛子様が品格を備えておられることと、天皇になられるべきかどうかということは、まったく次元の異なる問題です。メディアは、神々しいから天皇になってほしいなど、きわめて主観的で情緒的な議論を盛んに行っているような気がします。こうした取り上げ方には大きな問題があるように思います。
いま、メディアは愛子様称賛の報道一色です。しかし、今から15~20年ほど前はどうだったでしょうか。学習院初等科での不登校問題が起きていた時、長期間にわたってバッシング報道を続けていました。それが、小室眞子さんの結婚問題以降、秋篠宮家へのそれへと移り変わっています。メディアや、その映し鏡である世論というのは、このようにその時々の状況によって、非常に移ろいやすいものです。そのようなものによって皇位が左右されてはいけない、というのが私の考えです。
そもそもどなたが天皇にふさわしいかというのは、世論調査で決まるものではありません。それに、世論調査に回答した人たちが、皇室の伝統をどこまで理解しているのか。多くの人は、そこへの意識よりも、愛子様個人への愛着、また、女性の社会進出や男女平等などといった視点から、女性天皇・女系天皇に賛成しています。これは人気投票に近いものを感じます。本当にそれで良いのか。原点に立ち返って検証することは、極めて大事だと思います。
不文の憲法
――では、原点に戻りましょう。なぜ天皇は「男系」でなければならないのですか?
皇位がなぜ「男系」によって継承されなければならないのか。明治憲法下の皇室典範の解説書である、「(旧)皇室典範義解」は、その理由を次のように説明しています。初代神武天皇から第32代崇峻天皇に至るまで男系の男子が即位しており、これにより上代において既に変えてはならない皇室の家法が成立した、すなわち「不文の憲法」が成立したからだ、と。
これを私なりに解説すれば、「男系」は建国以来の「皇室の伝統」であり、初代天皇の男系の子孫であることこそが、天皇の正統性の根拠として考えられてきたということです。そして、それが不文のものではありますが、いわゆる「憲法」と認識されてきたから、ということです。
明治より前は、男系継承の原則は、このように「不文の憲法」として位置付けられてきました。そして明治以降は成文憲法として定められます。まず、明治憲法では、第二条ではっきりと「皇位」は「皇男子孫」(男系男子)が「継承する」と定められています。これに対して、戦後にできた現在の憲法の第二条では「皇位は、世襲のもの」と定めているだけです。
しかし、現行憲法は明治憲法を前提とし、それを改正して出来たものです。また、現行憲法の第二条に基づいて制定された皇室典範は第一条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と明記しています。そこで、新憲法制定以来、政府は憲法第二条の「世襲」は「男系」を意味する、少なくとも「男系を重視」するものと解釈してきました。この政府見解は、今日まで一貫しています。
女系天皇の賛成派は「護憲派」の人と重なる傾向が強いですが、安易な女系天皇論の採用は憲法違反の疑いがあることを、しっかりと認識しておく必要があります。
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