人妻がやたらとグイグイ頼ってくる 不在がちな夫の代わりに息子の家庭教師、棚の修理まで…45歳男性を待っていた“おあずけ”より辛い仕打ち

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拒めない夜

「あるとき『今日、ちょっとだけ来てもらえないかしら』と連絡があったんです。その日は夜9時過ぎでなければ行けないと言ったら、それでもいいと。てっきり息子の勉強を見るんだと思って行ったら、息子はいない。『私だけなの』と抱きつかれて、一瞬、ふりほどいたけど再度抱きつかれて、もう拒否できなかった」

 だが、ことが終わるとゆかりさんは急にそわそわし始めた。息子は友だちの家にいるんだけど迎えに行かなくちゃいけないのと、暗に「もう帰れ」と言わんばかりだった。

「抱き合ったのはいいけど、ほとんど話もせず、なんだか彼女に道具にされたような気がしました。でも夫ある身の女性を好きになったのは僕のほう。それまでいろいろ尽くしてきたことの単なるお礼の気持ちだったのかもしれないとさえ思った」

 そしてそれは当たっていたようだ。それ以降、ゆかりさんはまったく彼に連絡をしてこなくなったのだ。あるときスーパーで息子にばったり会い、「勉強、大丈夫か?」と聞くと、塾に行き始めたという。ゆかりさんはスーパーに姿を見せなくなった。別の店に行っているのだろう。

「近所で噂になったとか、そんなこともあるのかもしれない。いずれにしても僕が騒いでいい話ではないですしね。関係をもってはみたけど、ちっともよくなかったとも考えられる。いずれにしても続けたくなかったんでしょう。でも……」

 信克さんは口をつぐんだ。おそらく悔しいのだろうし、自分の恋愛感情を弄ばれたようなつらさもあるに違いない。彼女は信克さんの気持ちを知っていたはずだ。それでも相手は既婚者。彼が暴露したら彼女の息子が傷つく。ことが大きくなって噂になれば、回り回って自身の娘の耳に入る可能性もある。

「もう僕は誰も傷つけてはいけない。そう思っています。でもときどき弱い僕が顔を出す。最近、またアルコール依存のときに世話になったカウンセラーに話を聞いてもらっています。もう一段、もっと精神的に強くならないといけないと思うから」

 きっぱりとそう言ったあと、「生きていくことってつらいですね」と、彼は小声でつぶやいた。彼が言うように、生きていくだけでも大変なことなのだ。

「いっそ感情の揺れなど感じない人間になりたいと思っちゃいますよ」

 それが今の彼の本音なのだろうと思わせるような、しみじみとした口調だった。

 ***

 ゆかりさんの真意が見えないだけに、信克さんとしても気持ちの収めどころがないようだ。それにしても不運つづきの半生である……。記事前編では、元妻とのなれそめから別れまでを紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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