人妻がやたらとグイグイ頼ってくる 不在がちな夫の代わりに息子の家庭教師、棚の修理まで…45歳男性を待っていた“おあずけ”より辛い仕打ち
何かと頼られて
懐かしい思い出だった。それだけだったはずなのに、彼の気持ちは微妙に変化していった。ゆかりさんは人目もはばからず、「信ちゃん」と店内で呼ぶし、周りから奇異な目で見られてもまったく動じなかった。
「噂になったら、ゆかりちゃんが困るでしょと諭したこともあるんですが、彼女は全然、聞く耳を持たない。それどころか、『信ちゃんって理数が得意だったよね。うちの子、塾にも行かないし、高校に受かるかどうか心配でしょうがない。今度、教えてやってくれないかな』と言われて。実は娘の勉強を少し見ていたせいで、中学生の理数ならなんとかわかる。それで仕事の合間を見て、家庭教師ということでゆかりちゃんの家に行くようになったんです。軽率だったといえば軽率だったんだけど……」
自分の子のような年齢の少年に教えるのは楽しかった。高校生になった娘がだんだん精神的に離れていくのを感じていたからこそ、中学生の少年がかわいく思えた。ゆかりさんの昔の同級生だったと聞いた少年は、「へえ。おふくろ、おじさんのこと好きだったのかな」とませた口をきいた。
「それはないよ。おかあさんは昔からきれいでモテたんだよと言ったら、へえと素っ頓狂な声を上げていました。今どきの中学生は生意気かなと思っていたけど、彼は素直でとてもいい子だった。ただ、父親の出張が多いから寂しかったんでしょうね。部屋にグローブがあったからキャッチボールでもしようかと言ったら、すごくうれしそうだった」
ゆかりさんは「家庭教師っていくらくらい払ったらいいの? ごめんね、我が家はあんまりお金がなくて、たくさんは払えないの」とすまなそうに言った。「お金なんていいよ」と信克さんは思わず言ってしまった。ゆかりさんは、それじゃ悪いわとつぶやきながら、結局は払おうとしなかった。
それどころか、棚が壊れたんだけど直せるかとか、電気製品の使い方がわからないとか、なにくれとなく信克さんを頼りにした。それでいて夫が出張から帰ってくると連絡ひとつ寄越さない。家庭教師も「土曜の昼間、なんとかならないかしら」と急に言ってきたりする。信克さんは、できることは何でもした。頼られることがうれしかったし、自分が必要とされていることに喜びがあった。そしてなによりゆかりさんへの好意は、いつしか強い恋愛感情に変わっていた。
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