春の山菜採りで“遭難”や“食中毒”が絶えない根本的な理由…観光客よりも「地元の“名人”が自分の能力を過信していることが問題」との指摘も

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「すぐそこ」という油断が危ない

 山でもっとも恐ろしいのは遭難事故で、最悪の場合は命を落とすこともある、痛ましい事故はどうすれば減らせるのか。長野県警で山岳救助隊を務めたこともある、日本を代表するトレイルランナーの秋山穂乃果氏に話を聞いた。

――秋山さんは日本有数の山菜採りやキノコ狩りのメッカといえる長野県で、山岳救助隊を務めていました。遭難者を救助したことはありますか。

秋山:私は山菜採りの方を救助したことはありませんが、キノコ狩りの方はあります。実際に遭難した方を見ていると、これくらいの山なら大丈夫という慣れ、あるいは反対に経験不足が原因で遭難するケースがあると感じます。

――山菜採りやキノコ狩りは、本格的な登山とは異なり、そこまで深い山奥に入らないことも多いと思います。険しい岩場を歩くわけでもありません。にもかかわらず、なぜ遭難してしまうのでしょうか。

秋山:山菜やキノコを採る人は、藪のような、登山道ではない場所に入ることが多いですよね。さらに、家族に行き先を伝えていないこともあるんです。捜索するにあたっても、そもそも本人がどこにいるのか、わからないことも少なくありません。これが、山菜やキノコ採りの遭難者を捜索する上での難しさだと思います。

 そして、慣れている人ほど「山なんてすぐそこ」という感覚があるので危ないのだと思います。スマホや充電器を持たずに山に入ってしまうと、遭難しても連絡が取れなくなってしまいます。

――家族に行き先を伝えること、そして連絡手段を持つことは重要ですね。

秋山:私も毎日のように練習のために山に入りますが、必ず誰かに、どの山に何時から入り、どの行程で走るのかは伝えるようにしています。また、山ではスマホの充電の消耗が激しくなる傾向があります。充電器を忘れると、電池切れで連絡が取れなくなってしまうリスクもあります。

毎回クマに遭うと思って入山する

――遭難のリスクを減らすための心構えのようなものはありますか。

秋山:軽装備で入ってしまうことは、命取りになりかねません。私も、同じ山に日課のように入っていると、慢心が生まれることがあります。例えば、今日は重いからスマホの充電器はいらないかなとか、ファーストエイドキットや防寒着はいらないかなとか、少しでも装備を軽くする方法を考えてしまうんですよ。

 でも、そういう日に限ってトラブルに見舞われ、足を挫いたりします。足を挫くと走るペースが遅くなるので、一気に体が冷えてしまう。そんなときに防寒着を忘れていると、大変です。十分な体力がなければ、低体温になってしまうこともあります。

――山の恐ろしさを感じる話です。秋山さんが入山する際に欠かさない装備はありますか。

秋山:毎回クマに遭うと思いながら山に入るので、クマ除けの催涙スプレーは必ず持っていきます。あとは、ジップロックに防寒着、充電器、ライト、ファーストエイドキット、レインウェアを入れておき、毎回それをザックに入れてから練習を始めるようにしています。それらにプラスして、水と補給食のジェルも多めに持っていきます。

 恥ずかしながら、遭難とまではいかずとも、私は何度も山で失敗しているのです。今回のコメントも、自分を戒めるつもりでお話しさせていただいています。準備している時の「今日くらいは、これを持たなくてもいいか」という油断が命取りになると考え、山に入るようにしたいものですね。

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