道路が危険だから“ステイホーム”が必要か 日本全国の道路は、どれだけ陥没してもおかしくない

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過半数の道路の危険性が未調査

 この調査は、トラックの車体の後部から路面に電磁波を当て、反射波から地中の空洞を探るというもの。地下に埋設された上下水道などのデータとも照合し、地下2メートル程度までの空洞の場所や大きさ、深さなどを特定できるという。

 国が管理する国道に関しては、国土交通省が5年で一巡するペースで、この「路面空洞化調査」を行っている。だが、都道府県や市区町村が管理する道路は、調査を行うかどうかが自治体の判断にまかされている。読売新聞は計1788自治体に対してアンケート調査を実施し、1593自治体から回答を得たが、74%にあたる1184自治体が2013年以降、1度も調査を実施していないと答えたそうだ。74%の自治体は道路の危険性を放置していた、あるいは、見て見ぬふりをしていた、ということである。

 国道では実施されているから悪くない、と思ったら大間違いである。国土交通省によれば、2023年3月時点で、一般国道の総延長が6万6546キロメートルなのに対し、都道府県道の総延長は14万3046キロメートル、市町村道は106万6459キロメートルで、国道は全体のごく一部にすぎない。結局、過半数の道路が未調査ということだろう。ちなみに、八潮市の事故が起きたのは県道で、前述した新潟市の事故は市道であった。

 調査を実施していない自治体の50%が、理由として「予算を確保できない」と答えたそうだが、そうしているあいだに、法定耐用年数を超えた下水道管も、八潮市のような、まだ超えてはいないが危険な状態にある下水道管も、どんどん増えるはずである。

 この状況はたとえれば、地雷が埋められた道路が増えているのに、どこに埋まっているか調査もせず、放置しているようなものだ。ホルムズ海峡なら、船は機雷なんか気にせずに航行しろといわれているのに近い。コロナのときは全国の自治体が執拗に「ステイホーム」を強調したくせに、どうして道路が危険な状況にあり、通行する人の安全が脅かされているのに、平気な顔をしていられるのか、と嫌みのひとつもいいたくなる。

結局、必要なのは税金

 各自治体のもとでは、公営企業による独立採算制で運営されている水道事業も、水道管の耐用年数が急速に訪れるなどして、先行きが危ぶまれている。生きるためにも、衛生環境を維持するためにも、経済活動にも欠かせない水道インフラが維持できないとしたら、きわめて危険である。同様に下水道インフラも、生活用水や雨水を処理するために絶対に欠かせない社会基盤で、そのうえ老朽化すると、人間の生命に関わる事故につながる。

 少子化が進み、人口が減少するのに反比例して、これらインフラの老朽化が急速に進もうとしている以上、その管理や更新は、これからますます困難になる。ところが、これから先にくらべればまだ余裕があるはずのいま、多くの自治体で「路面下空洞調査」を行う予算も確保できない現状は怖ろしい。

 国が主導して、地方自治体がスムーズに調査が行えるシステムを構築すべきだが、自治体に先立つものがないのも事実だろう。まちがいなくいえるのは、私たちがいままで当たり前に享受してきた生活上のサービスを維持するためには、これまで以上に税金が必要だということである。「生活のために減税を」という主張は、生活の破壊にしかつながらないことを、私たちはそろそろ認識したほうがいい。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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