掛軸って洋室にも飾れるの? 「ええ、タペストリーだと思ってください」 気鋭の日本画家が語る“床の間”がなくても味わえる「日本画の醍醐味」
掛軸はタペストリーだと思えばいい
――日本画と聞くと、第一に、掛軸のイメージが思い浮かぶと思います。私の周りのコレクターに聞くと、掛軸のイメージが強いせいか「日本画は買っても飾る場所がない」と嫌厭する人もいます。あとは、「開運!なんでも鑑定団」に登場する骨董品のようなイメージが根強いといいますか。
丁子:掛軸について、みんな仰々しく考えすぎじゃないかな、って思います。みなさん、型にはめすぎなんですよ。古臭いイメージをお持ちの方が多いと思いますが、掛軸はタペストリーだと思って扱えばいいんです。床の間がなくても、推し活グッズのような感覚で、普通にその辺にかけていいんですよ(笑)。
――目からうろこの素晴らしい提案ですね。書院造の床の間がなくても、洋室の壁にかけてもいいと。
丁子:私の祖父は骨董屋を営んでいたのですが、家の洋間とか、そこらじゅうに掛軸をかけていましたよ。だから私は、掛軸はどこに飾ってもいいものだと思っていました。日本人が美術と向き合う上で必要なのは、もっと日常生活に絵を溶け込ませることだと思うんですよ。日本画もカジュアルに楽しんでいただきたいと思います。
伝統的なものといえば、着物だってもっとラフに着ていいと思いますよ。それこそ、江戸時代の人にとっては普段着でしたし、今みたいにピシッとは着ていなかったはずですからね。
――SNSにはとくに“着物警察”みたいな人たちがいますが、みんな型どおりにしないといけないと思っているのかもしれませんね。
丁子:そうそう。たぶん、美術がいちばん、イメージや型にはめられちゃっている部分があるのかもしれないですよね。日本画は特に、古臭いとか、難しいというイメージが拭えないのかもしれません。
私の絵はアクリルボックスに入れていますが、「普通の洋室に飾ってもいいのでしょうか?」と聞かれるときもありますから。日本画といえば床の間、というイメージは根強いなあと思いました。
その一方で、私は掛軸にも魅力を感じています。実は最近、掛軸を制作したんですよ。表装も京都の藤井好文堂さんにお願いし、私の絵に合った現代的なデザインにしていただきました。額装が基本の洋画とは違った味わい方があるので、掛軸は追求する価値があると思います。近い未来、掛軸だけの展示をしたいと思っているくらいです。
日本画には大きな可能性がある
――丁子さんの話を聞いていると、日本画にはまだまだ希望がありそうだし、面白いことがたくさんできると感じますね。
丁子:そうですね。私はすごくポジティブに考えています。日本画の一番の魅力は、やっぱり素材感だと思うんですよ。岩絵の具が生み出す質感は、他ではなかなか味わえないものだと思います。
――おっしゃる通りですね。
丁子:画家としても、何千年も地中で眠っていた天然の石を砕かせてもらい、絵に使っているわけじゃないですか。こんな素敵なことってありますか、と私は思っています。私は一時期ジュエリー業界にいたこともあって、石も好きなんです。だからこそ、描いていてもワクワクする。それが日本画の醍醐味だと思います。
前編【気鋭の日本画家「丁子紅子」インタビュー “資産価値”でも“高尚な趣味”でもない「絵を家に飾る」ことの魅力 「社会が混乱している時代だからこそ、絵を手にしてほしい」】では、日本画家の丁子紅子さんに、現代アートが人気の今、日本画がどういう立ち位置にあるのか、現状について詳しく伺いました。
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