気鋭の日本画家「丁子紅子」インタビュー “資産価値”でも“高尚な趣味”でもない「絵を家に飾る」ことの魅力 「社会が混乱している時代だからこそ、絵を手にしてほしい」

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気軽に本物の絵を手にしてほしい

――実際、丁子さんは日本画の可能性を広げる活動に積極的に取り組んでいます。XやInstagramも更新頻度が高いですよね。

丁子:SNSでは、なかなか岩絵の具の美しさや絵の質感までは伝わらないのが歯がゆくはありますが、なんとなくでもいいので興味を持っていただき、ギャラリーに足を運んでいただければと思っています。

 日本画は、写真と実物で、見た時の印象が大きく異なるんですよ。実際に生で絵を見て、「あ、こんなに綺麗なんだ」とか、「こんな素材感なんだ」と感じてもらえれば、気に入っていただけると自信を持っています。

――日本画といえば、屏風や障壁画のように巨大な絵が連想されますが、丁子さんは手に取れるサイズのコンパクトな日本画も制作していますね。

丁子:絵画って、そもそも高いじゃないですか(笑)。値段に抵抗を感じる方が、ひょっとすると大半かもしれません。では、どうしたら手軽な値段で、ポスターなどの印刷物ではない“本物の絵”を持つ体験をしていただけるだろうかと考えたのです。そして、手のひらに乗るぐらいの小さなサイズであれば、1万円前後で提供ができるかなと。

 とはいえ、小さいサイズの作品も手を抜いているわけではありません。通常の作品同様に岩絵の具を使って一点一点仕上げていますし、展示会でも使うアクリルボックスに入れて販売しています。販売開始から6年ほど経ちますが、絵を所蔵したことがなかったという方が日本画の魅力にはまり、後から大きな絵を買ってくださったことも何度かありました。

――今年になって、“懐中日本画”と題して、キーホルダーにした日本画の販売も始めていますね。

丁子:これは、つい最近作り始めたばかりです。ケースは高いものではありませんが(笑)、もちろん絵はしっかり描いています。複製ではない本物の絵、特に日本画をこのサイズで販売している例は珍しいと思いますよ。

購入する層をいかに広げるか

――日本では、現代アート、日本画、洋画に限らず、絵を買う文化が定着していないですよね。そこが日本の美術市場がなかなか拡大しない要因でもあるし、アーティストが生計を立てていくうえでも大きなハードルではないかと感じます。

丁子:そうなんですよね。私は、部屋の壁に何か絵を飾るだけで生活が豊かになると思いますし、部屋の雰囲気もガラッと変わると思うんですよ。絵は嗜好品ではありますが、逆に社会が混乱している時代だからこそ、絵を手にしてほしい。その魅力を伝えるためにも、様々なことに取り組んでいきたいと思っています。

――その一方で、日本人って、美術館はめちゃくちゃ好きじゃないですか。絵は美術館で見るもので、買うものではないという意識が強い気がします。

丁子:鑑賞する文化だというのは、おっしゃる通りと思います。美術展の人気が高いのは日本人の性質だと思うんですけど、みんなが話題にすると行きたくなったりするわけで、フットワークは軽いのでしょうね。

 一方で、基本的に美術館で絵に触れた方々は、それが家に来る、家に飾れるという感覚にはならないのかもしれませんね。ギャラリーにいらしたお客様も、「絵って、買えるんですね!」と驚かれることがすごく多いんですよ。そのあたりの意識を変えていきたいなと思っています。

後編【掛軸って洋室にも飾れるの? 「ええ、タペストリーだと思ってください」 気鋭の日本画家が語る“床の間”がなくても味わえる「日本画の醍醐味」】では、新進気鋭の日本画家である丁子紅子さんに、日本画の魅力、楽しみ方について、より深く伺っています。

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