【インタビュー】70歳・内藤剛志が頑なに守る“信念” 浜田雅功への「師匠」呼びと、激しく嫌う2つの言葉

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

刑事ドラマの帝王

 内藤は6月12日に公開される映画「劇場版 旅人検視官 道場修作」に主演する。BS日テレの「令和サスペンス劇場」(土曜午後7時)で2023年に始まり、第6弾まで放送された同名ドラマシリーズが、人気に後押しされて映画にコンバートされる。

 このシリーズでは定年退職した元凄腕検視官の道場修作が、亡き妻(南果歩)の愛した俳句ゆかりの地である山形県湯野浜温泉や富山県庄川温泉郷などを旅する。だが、訪れた地で思いがけず事件に巻き込まれていく。

 自主映画の出身だから、映画化には特別な思い入れがあるのではないか。

「ええ、ありますね。ただし、映画とドラマでどちらが上みたいな格付け意識は一切ないんです。そもそも今はドラマと映画の機材も変わりません。昔の映画はフィルムで撮影しましたが、今はドラマと同じデジタルの機材を使い、セッティングを変えて撮るだけですから。でも大きな違いもあります。映画はみんなで観るものだということです」

 ドラマは大抵、少数人で見る。家族、あるいは1、2人で観る。だが、映画は映画館で見知らぬ人たちと一緒に観る。そこが異なる。

「良い例かどうか分かりませんが、病院の待合室って、アトランダムに大勢の人が集まりますよね。 映画はそういう人たちが一緒に同じストーリーを観るようなもの。また映画はエンドマークが出た後、周囲のみんながどんな風に感じたんだろうって思いますよね」

 場内が笑い声、あるいは嗚咽に包まれることもある。それが作品の記憶として刻まれることも珍しくない。

「ドラマだと途中で何かをすることも出来て、自分のテンポで観られる。けれど映画のお客さんは僕たちから与えられたものを観るしかない。映画はそういうことも意識してつくらなきゃいけないと思っています」

 理屈としては分かる。だが、観客が自分たちの提供したものしか観られないことを念頭に置いて制作するのは難しいのではないか。

「ええ。だから監督を始め、スタッフと出演陣全員が毎日、『映画って何?』って考えるんです。多分、みんなで考えることが答えなんですよ」

 映画版での道場は正岡子規ゆかりの地である愛媛県松山市と内子町を旅する。道後温泉などを巡りながら、亡き妻との思い出に浸った。ところが、俳句を通じて知り合った岸山飛鳥(羽田美智子)の言動に違和感をおぼえる。その思いは当たる。20年前に東京で起きた未解決事件が急浮上してくる。

 映像には松山城、三津浜、石手寺、高昌寺など愛媛県の名所が登場する。ストーリーに悲哀もある。2時間ドラマの必須要素が漏れなく散りばめられている。

「旅情の要素が求められるのは、知らない街へ行くってことが日常生活ではなかなか出来ないということがあるのでしょう。それと、人生において何か自分が想像していないことに出会いたいっていう欲求みたいなものも人間にはあるんじゃないでしょうか」

 内藤は1995年から01年にかけて27クール続けて連続ドラマに出演するという日本記録を持つ。今度は捜査関係者としての主演ドラマの数も記録を樹立しそうな勢い。

 代表的なものだけでも十津川省三役のTBS「十津川警部シリーズ」(2017~19年)、大岩純一警視正役のテレビ朝日「警視庁・捜査一課長」(16~24年)、樋口顕警部役のテレビ東京「警視庁強行犯係 樋口顕シリーズ」(15年~)、辺見定一係長役のフジテレビ「寸劇刑事」(04年)。

 なぜ、次々と捜査関係者役を任せられるのか。答えは単純明快。うまいからである。

内藤剛志(ないとう・たかし)
本名同じ。1955年(昭30)5月27日、大阪府生まれ。日大芸術学部時代は自主映画に熱中し、中退後に文学座研究所を経て、80年の映画「ヒポクラテスたち」でデビュー。テレビ朝日の主演作「外科医・夏目三四郎」(98年)などで人気に。19年に優れたテレビ関係者に贈られる「橋田賞」を受賞。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。