死後4カ月 信者のミイラ化遺体を前に「まだ生きている!」 「ライフスペース事件」グルが施した「800万円」治療の狂気

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背中はうっ血し…

 7月3日以降にも、Aさんは亡くなっているとしか思えない内容が記されている。

〈7月5日 腕が緑色になってきた。そして、背面はうっ血して血膨れのようになっていた。喉の奥に痰のような濁った水が上がってきていた〉

〈7月27日 父の、鼻の穴の中やその周辺に、白い、うじのような、小さな虫が、3匹ほどいるのを見つけた。すぐにGURUに報告すると、見せてください、という事だった。
 GURU:すなわち行者ダニとでもいえば、すなわち、生きた人間である事、この事が絶対条件なのですよ〉

 人が亡くなり、腐敗していく様子が記されているのではないか……しかし、高橋はAさんに起こっている変化も“生きている証拠”であるかのごとく家族に語り続けていた。

遺体写真も同封

 Aさんの呼吸が止まって2ヶ月が過ぎた同年9月にも、高橋は“治療”のためにホテル客室を訪れている。

〈9月9日、GURUが部屋にやって来た(中略)治療のために出て来てくれたのだ。私は、何と言って良いか、感無量で、言葉もなかった。
 GURU:今のAさんの状態は、入定と言って、生きて死ぬ時の、最終段階です。生きた屍と言うか、別名、ミイラ(mummy)の事です〉

 Aさんの息子が綴ったこの『闘病ドキュメント』は全5冊。ライフスペースは、団体を批判的に取り上げた報道機関やコメンテーターを相手取り、名誉毀損訴訟を起こしており、係争相手などに『闘病ドキュメント』を送りつけていたのだった。それだけでなく同団体は、Aさんの写真も同封していた。当時の各週刊誌には、Aさんのミイラ化した遺体が大きく掲載されている。

 ライフスペース側は事件発覚後の記者会見では「5冊シリーズ100セットを100万円で直接販売します。みなさんは、それを倍の200万円で売ってください……」と、『闘病ドキュメント』とミイラ写真の“セット販売”をマスコミに持ちかけてもいる。

 いずれにしろ、高橋による“治療”はまやかしで、医療行為は行われていない……記録からはそう読み取れる。しかし高橋らはその後、茨城県大洗町にて不可解な記者会見を開き、逮捕まで同町のホテルに“籠城”した。

 【後編】では、この異様すぎるグル、高橋弘二の来歴について詳報している。会見で連呼した摩訶不思議なワードとは? そして、逮捕、起訴された高橋の“その後”は――。

※参考にした雑誌記事は【後編】末尾に記しています。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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