死後4カ月 信者のミイラ化遺体を前に「まだ生きている!」 「ライフスペース事件」グルが施した「800万円」治療の狂気

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「グルの治療を受けさせたい」

 遺体で見つかったAさん(66=当時)が、成田市のホテル客室に運び込まれたのは、事件発覚から4ヶ月も前の同年7月のこと。兵庫県川西市在住のAさんは6月、風呂で倒れ同県内の病院に搬送されたが、脳内出血と診断され、そのまま入院していた。ところが妻と息子が「グルの治療を受けさせたい」と、Aさんに繋がれた人工呼吸器や点滴を無理やり外し、成田市まで連れて来ていたのだった。事件発覚時、部屋にいたのはこの妻と息子である。

 2人が「グル」と称する男は「SPGF」(シャクティパットグル・ファンデーション)という団体を主宰していた高橋弘二(当時61)。Aさん家族は、彼とSPGFが設立した自己啓発セミナーである「ライフスペース」の会員だった。ホテルには1999年1月から「都内の出版業者」を名乗る団体が4部屋で宿泊しており、最大時には15部屋20名にも膨らんでいたという。9月頃、ホテルに対し「いかがわしい団体が泊まっている」といった投書が届いたことがきっかけで、退去させられていたが、Aさんの遺体が横たわっていた客室だけは「病人がいる」という理由で連泊状態が続いていた。

治療費は800万円

 ライフスペースの「グル」だという高橋は、このホテルでAさんに対しいかなる「治療」を施していたのか。これはAさんの遺体発見後、同団体が自ら公にしていた。なんと“Aさんが治療中だった”ことを証明するため、同年7月から10月末までのAさんの様子をまとめた『闘病ドキュメント』と題する本を警察に提出したうえ、マスコミ各社にも送りつけていたのである。

 警察がAさんの遺体の司法解剖を行おうとしたときも、家族は「(Aさんを)返せ。生きているのに解剖したら本当に死んでしまう」と抗議していた。父親が生きていると信じ続けていた息子による『闘病ドキュメント』には、Aさんの様子だけでなく高橋の行動や発言も記録されている。

 グルの勧めで800万円もの費用がかかる「3Sセミナー」なる治療を受けさせるため、家族がAさんを成田市のホテルに運び込んだのが7月2日。Aさんの息子による、翌朝の記録は次のようなものだった。

「シャクティパット」とは

〈7月3日 6:35AM Shakty PAT後、父の呼吸がかなり楽に、そして深くなったように聞こえた。でも相変わらず痰は苦しそうであった。姿勢を確保していたところ、突然、父の呼吸が止まった。段々ゆっくりした呼吸になり、はあーと息を吐き切って、その後吸うことはなかった〉

〈6:50AM GURU:人は30分呼吸が止まって心臓が止まっていても大丈夫なんです。そんなにギャーギャー騒がなくても大丈夫です〉

〈7:50AM 呼吸が止まってから30分が経過した。再度GURUに報告に行ってもらった。
 GURU:今、魂が再生に入っているんです。生まれ変わる時なんです。脈も回復してきているんですよ〉

 息を吐き切って、吸うことはなかった……まさにAさんが亡くなってしまったようにも読めるが、GURUである高橋は“Aさんが生まれ変わる時”なのだと家族に説いていることが分かる。“Shakty PAT”(シャクティパット)とは、高橋がAさんの頭をポンポンと叩き“気”を送り込む“治療”のことだという。

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