妻を抱こうとした、でもできなかった…ある日「妊娠しちゃった」と告げられて それでも「僕が彼女を裏切った」と56歳男性が悔やむ理由
友満さんの“告白”
新婚旅行は、真澄さんの仕事の都合で延期し、お互いに仕事優先の日々が始まった。平日の夕食は各自勝手にする、週末はふたりでのんびりしつつ、家事を一気にこなす。そんなゆるやかな約束をした。
「1年たったとき、妻から言われました。『どうする? 私たち』と。隠してはおけなかったから、僕は、実は今まで女性を愛したことはないけど真澄のことは大好き。そこに性欲が伴うはずだと思っていたが、どうやらそうではなかったようで自分でも戸惑っている。ただ、同性が恋愛対象なのかどうかはわからないと正直に言いました。その1年の生活を経て、僕は彼女をとても信頼していたし頼りにもしていた。だから僕自身のどうしようもない気持ち、そして騙すつもりなんてまるきりなかったことをわかってもらえるんじゃないかと思ったんです」
真澄さんはクスッと笑った。なんだかそんな気もしなくはなかったと。「私も友ちゃんが大好き。だけど私、子どもがほしいのよ」とも言った。
「そのとき、真澄がどこかへ行ってしまう可能性もあるんだと、僕は初めて気づいたんですよ。愚かですよね、そんなことに気づいていなかったなんて。だから慌てて言ったんです。誰かと子どもを作ってもいい。その子を僕と一緒に育てようよ。いや、きみがどうしても離婚したいというならそうする。きみの言うことを全部聞く。だから遠いところへは行かないでって。わけのわからないことを言って、ちょっとパニックになりました」
真澄さんは泣き出した友満さんの背中をゆっくりと撫でてくれた。あとから彼女は「あなたはおかあさんとおねえさんに捨てられたような気持ちを抱いているんじゃない?」と指摘したという。彼自身、その指摘に驚き、もしかしたらそうかもしれないと感じた。だから真澄さんに去られるのを極端に恐れたのだろう。
「真澄は『離婚はしない。浮気もするつもりはないよ、たぶん。でもわからない。ごめんね』って。正直すぎますよね。その後、僕もがんばって妻を抱こうとしました。でもできなかった。真澄は無理しちゃダメ、友ちゃんが壊れるからと言ってくれた」
「ごめん、妊娠しちゃった」
2年後、真澄さんは「ごめん、妊娠しちゃった」と白状した。ふたりで育てようと友満さんは説得したが、真澄さんは「子どもの父親である彼が一緒に子育てすることを望んでいる」と言った。真澄さんの相手と友満さんは、3人で会っている。そこで交わされた大人の会話を、友満さんは今も覚えている。誰も激してはいなかった。
「結婚しているのをわかっていながらつきあったのは申し訳ないと彼が言いました。いや、僕が真澄を幸せにできなかったのが悪いと、僕も言った。私は幸せだったよと真澄が言う。『友ちゃんと子どもを育てるのも楽しいだろうと思った。でもごめん、今のところ、私の生活に、愛する人とのセックスは不可欠なの』って。正直さがありがたかった。彼に、ふたりを頼みますと言いました。彼は『よかったら、いつでも来てください。友人として歓迎するから』と言ってくれた。母の再婚相手にちょっと似た男だったから、近づかないほうがいいと思った。真澄に迷惑をかけるだけですからね」
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