「ピッチャー、第1球を投げました!」 プロ野球「ラジオ実況」で3分に一度は伝える必要がある“大切な情報”とは?

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中継全体を一人で仕切る

 こうした訓練を積んでいよいよデビューとなるわけですが、訓練と違い本番では解説者との掛け合いもあります。それまでは一人でしゃべっていたのに解説者に質問したり、解説者の発言を受けて話を広げたりと、デビュー後もまさに毎回が試練の連続でした。

 ここまで読んでご理解いただけたと思いますが、ラジオのスポーツ中継は野球に限らず放送開始から終了まで、アナウンサーの目から入った情報を切れ間なく言葉にしてお伝えするのが仕事です。

 目の前に広がるグラウンドで繰り広げられるプレーをいかに細かく描写して、リスナーの頭の中にグラウンドの情景を鮮やかに思い浮かべてもらうことが出来るかが勝負なのです。いわば、アナウンサーが中継全体を一人で仕切るのです。

 言い換えれば、球場のどこに視点を当てるか、これこそがラジオのスポーツアナウンサーとして感性が問われる部分なのです。

 私が所属していた東海ラジオのような、ラジオ単営で中継を制作している局は多くありません。(経営上の理由で分社化した局もありますが)大半はラジオ・テレビ兼営局です。ラテ兼営局でスポーツアナウンサーのキャリアを積むには、まずラジオで実況の実績を積み、そこで認められてテレビを担当する、というのが一般的です。これが原因だと思いますが、ラテ兼営局では「ラジオ<テレビ」、つまりテレビのほうが上という考えが今でも支配的だと思います。

 リスナーや視聴者から見ると、テレビでもラジオでもしゃべるのは一緒とおもわれるかもしれません。ラテ兼営局では、プロデューサーやディレクターも同じ感覚で「こいつラジオ実況はできるようになった。そろそろテレビもやらせてみるか」という流れが常識となっていると思います。でも、しゃべっているアナウンサーにとってはラジオとテレビは全く別物で、実は似ても似つかないものなのです。

 決定的な違いは、映像があるかないかなのですが……。

 長くなりましたので、次回はラジオとテレビの実況の違いについて、フリーになって私が生まれて初めて「映像付き」で実況するようになったDAZNでの経験も織り交ぜつつお伝えします。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。

デイリー新潮編集部

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