接骨院と整形外科はどう使い分けるべき? 専門家が教える、体の不調の「駆け込み寺」の選び方

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無資格者の開業を後押しするものとは

 治療の対象となる不調は痛みやしびれにとどまらない。自律神経の乱れによる倦怠感、頭痛、食欲不振といった不定愁訴も、マッサージ師の施術を受けて改善することがある。

「現代人はストレスが多いからだと思うのですが、指圧・マッサージなどで心身を整えると症状が改善する方がいます。この点については、学術論文も出ています」(金子さん)

 しかしここにきて、有資格者の専門性に関して一般の認識が薄くなっているとの危機感を金子さんは抱いている。その原因の一つがまさに、ちまたで見かけるリラクゼーション系施設の増加である。

「“○分○円”といった表示で開業するお店の中には無資格者が施術をしていることがあり、効果はそれなりだったりします。そういう経験をしてしまうと“マッサージって、この程度なんでしょ”とか“大したことないんじゃないの”という印象が残ります。そうした認識が広がっているせいか、“えっ、腰痛って指圧で治せるんですか”などと聞かれることもあって、残念ながらわれわれへの期待値が下がっている面があるのは否めないと感じます」(同)

 リラクゼーション業は年々市場を拡大中だ。その契機となったのは、2014年に総務省の日本標準産業分類で「リラクゼーション業(手技を用いるもの)」が新設されたこと。

「時代は変わりましたね。それ以前は、国家資格を持たずにほぐしをやる人は遠慮がちに営業していました。ところが標準産業分類に新設されるや、ある意味、国からお墨付きを与えられたという認識を持ったのか、大手を振って仕事するようになったんですから」(同)

 こうした無資格者の開業を半ば後押ししているのは、1960年に最高裁判所が示した判例だ。無資格者による手技などを用いた療術行為業について〈禁止罰則の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局される〉と判示している。金子さんは「健康を害しなければOKだと解釈されているのではないか」と言う。

不適切な料金表示

 さらにリラクゼーション業に追い風を吹かせ、マッサージ業には事実上“逆風”となっているのが、皮肉なことに法制度なのである。

 国家資格者には「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」の頭文字を取った「あはき法」でいくつも縛りが設けられている。

 たとえば広告。打ち出してはいけないのは、肩こり、腰痛といった適応症例。さらには「○○の治療」「○○の改善」「○○の予防」といった効果・効能の表現も御法度だ。SNSにおいても広告規制の対象となるため自由に広告することはゆるされない。「○回○円」「○分○円」などの料金表示も不適切とされる。

 一方のリラクゼーション業にそうした法律はない。料金表示を堂々と掲げられるのもそのため。金子さんが驚愕(きょうがく)したのは10年ほど前、「60分2980円」というほぐしの広告を見たときだ。

「当時、私たちの業界の相場は60分6000円程度。とても太刀打ちできないと感じましたね。もし同じ額でやれというのなら、この仕事は続けられないと思いました」

 金子さんの同業者にも客が減った例は後を絶たない。そこで在宅マッサージに活路を見いだすケースが出てきたそうだ。歩行が困難になったり、高齢で通院ができなかったりする人のため、出張してマッサージを施すという形態である。医師の同意書が必要だが、患者側は医療保険が使えて、施術者の側にも「往療料」、いわば足代が加算される。

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