バスタブやカヤックが高速道路に転がっていることも…“落下物”回収のプロ「交通管理隊」が明かす“作業をしていて命の危険を感じる場所”とは

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落下物の落とし主の多くがトラック

 落下物の回収場所に案内してもらった。

 そこで目につくのは、フォークリフトで運搬する際に使用する板状の台「パレット」や、養生に使われる毛布、角材、フレコンなど、やはりトラックによく載っているようなものだ。

 トラックのなかでも特に落下物が多いのは、「平(ひら)ボディ」だ。平ボディはクレーンで吊らないと積めない鉄筋や金型、大型の製造物などを運ぶ際によく使われるタイプの車両だ。

 荷台が箱型のトラックは何かの拍子でクルマが跳ねても、荷物が車外に飛び出ることはほとんどない。が、平ボディは「幌(ホロ)」と呼ばれる布で上を覆っているだけ。そのゴムが緩かったり、荷締め(積んだ荷物を固定する作業)が甘かったり、そもそも固定していなかったりすると、荷物が容易に荷台から落下する。

 一方、普段トラックの荷締めを経験していない一般の人たちが、軽トラックを借りて落としたと思われる家具などの落下物も見受けられた。先述した「季節ごとの落下物」には、家具や引っ越し関連の落下物も少なくないという。

 落とし主が業者なのか一般人なのかは分からないが、実際、落下物置き場の一角に「バスタブ」が置かれていた。

 これほど大きなものが時速100キロのクルマが走る高速道路のど真ん中に落ちていれば、それは「障害物」ではなく、もはや「凶器」だ。バスタブをよく見てみると、クルマと接触した跡がある。

「こうして衝突痕や乗り上げの形跡がある落下物においては、証拠で使われることがあったりするので、すぐに廃棄せずにしばらく残しておくようにしています」

落下物のその後

 こうした落下物は、回収後どう処理しているのだろうか。

「落とし主が分かっていれば引き渡し、または会社に回収を依頼しています。判明していない場合は、明らかな廃棄物を除いて、先ほどのバスタブのように一定期間保管し、その後に破棄しています。生ものは基本的に廃棄していますね」

 落下物や散乱物を回収するには、人的にも物的にもコストがかかるはず。これらに対して、落とし主に費用を請求したりはしているのだろうか。

「落下物が原因となり、道路に汚損や破損が生じた場合には、その復旧にかかる費用を請求する場合がありますが、通常の高速道路の維持管理の中で行っているので、費用は基本的に請求していません。通行止めを実施した場合の減収に対する損害賠償等も請求していません」

現場からの切なる願い

 最後に、高速道路利用者に対して隊員からのお願いを聞いた。

「私たちパトロール隊は、落下物の回収時は必ずパトロールカーの赤色灯と車載標識でお知らせをして作業しています。高速道路上にまさか人が立っているとは思われないかもしれませんが、私たち交通管理隊はそんな危険な場所で生身の体で作業しています。パトロールカーを見つけた時には、速度を落とし、前方によく注意した走行をお願いします」

「落下物の情報は、道路管制センターで制御する情報板によって情報提供していますが、必ずしもお客さまが確認出来る場所に情報板があるとは限らず、突然目の前に落下物が現れる可能性も。速度規制50キロの時は、その先で作業していたり、何か事故や故障・落下物が発生しているので、より注意して走っていただきたいです」

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

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