バスタブやカヤックが高速道路に転がっていることも…“落下物”回収のプロ「交通管理隊」が明かす“作業をしていて命の危険を感じる場所”とは

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死と隣り合わせの現場

 交通管理隊の現場は、まさに死と隣り合わせの現場だ。次から次へと時速100キロのクルマが向かってくる高速道路に、生身の体で進入するのだ。回収現場では、1人が旗を振り、もう1人が作業をする。

「走行中の人に、我々の存在を示すことに加え、車線変更を促す意味で旗を振ります。ただ、振り方によっては、こちらが車線変更してほしいと思っても、通行者が勘違いして止まってしまうことも。意思疎通がうまくいかないせいで隊員が事故に巻き込まれるリスクもあるので慎重にしています」

 道路内では、こちらに走行してくる車に背を向けてはいけないという鉄則がある。隊員たちはヘルメットを装着しているが、体をガードすることはほぼない。危険な目に遭ったことはないのだろうか。

「車線規制をしている時、規制のために立てている機材を避けていただけない車両もあります。逐一、目を離さないようにして、すぐに逃げられるような体勢は取っていますが、目の前を猛スピードでクルマが通りすぎるとやっぱり背筋がゾクゾクと凍り、怖いです」

 ブルーカラーあるあるだが、冬はもちろん、夏でも隊員はけが防止のため長袖で作業を行う。素材の違う夏用の作業服の着心地を隊員に聞いてみた。

「暑くないですか?」

 すると一人の隊員が、上司の顔色をうかがいながらこう漏らす。

「あの、ぶっちゃけていいんだったら……暑いです」

 会場から笑いが起きた。

今まで拾ってきたもの

 前回もサバや生きた豚、ブロッコリーなど、報道された散乱物・落下物について紹介したが、今回集まってくれた4人の隊員たちにもどんなものを拾ったことがあるのかを聞いてみた。

「カヤックですね。どうやって落ちたのかは分かりませんが。あれを本線上から排除しましたが、大きすぎて車に乗りませんでした。そういう場合は、落下物を路肩のガードレールの外の方にいったん置き、別のメンテナンス業者に回収をお願いしています」

 よく車の屋根に荷物を載せているクルマを見かけるが、高速道路では必ず後ろに落ちるため、落としても気付かないことがある。この件ではその後、落とし主が現れたかは分からないようだが、湖について、さあ漕ぐぞとルーフを見たらカヤックがない、ということになっていなければいいが……。

「自分は牛の皮を回収したことがある。管制センターから指令を受けたんですが、普通、牛の皮が落ちていると聞けば、『革ジャンみたいなものが落ちてるのかな』と思うじゃないですか。でも、対向車線から対象物を見たら、ホルスタインの白と黒の生皮がベチョっと5枚ぐらい落ちていたんです。まさに今剥いだばかりというような」

 実際の回収は、思った以上に難航したようだ。

「牛の生皮って、重たいですし臭いんですよ。落とし主がいらっしゃったので来ていただいたんですが、作業員と落とし主、共に中央分離帯で嘔吐してしまうほど臭かったです(笑)」

 しかし、この牛皮にはもう1つ難点が。

「生皮だったので、油がびっしり路面に付いてしまって。油処理剤を撒いて綺麗にして、滑らないように掃除しました。ガソリン・軽油、オイル漏れは頻繁に起きるので、油処理剤は巡回車に常に積んでいます。それで牛の油もいけました(笑)」

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