SNSで炎上する博物館の“資料廃棄”問題…学芸員が明かす「収蔵品は15年間で3000点も増加」「欧米では収蔵品の廃棄、売却は一般的」という事実
高度経済成長期やバブル期など、日本に勢いがあった時代、地方には公立の博物館が数多く建設された。そうした博物館は、地域に残る文化財や歴史資料を保存・管理する殿堂となることが期待され、実際にその役割を担ってきた。しかし、開館から数十年の年月が経ち、あふれる収蔵品の管理に苦慮している施設も少なくない。
【写真】増え続ける収蔵品を独自の基準で管理する足立区立郷土博物館の外観
文化財は地域の人々の誇りであり、宝であり、後世に受け継いでいくべき存在である。しかし、それらの適切な管理の在り様について、議論が積極的になされてこなかったのは反省点であろう。そして、博物館や資料館の運営もどこか他人事で、地域の問題として考える機会は少なかったのではないだろうか。
SNSを中心に、博物館の収蔵スペースを圧迫している資料を破棄する是非について、議論が巻き起こっている。一部には感情的な意見もあるものの、文化行政の将来を考える機会になっているのは間違いない。足立区立郷土博物館で資料の維持管理に向き合ってきた、文化遺産調査担当係長を務める学芸員・多田文夫氏に、博物館が抱える諸問題について話を聞いた。【取材・文=山内貴範】
寄贈の申し出は現在も多い
――博物館に対し、個人や団体から「資料を寄贈したい」という申し出は、どれくらいの頻度であるのでしょうか。
多田:年間20~30件は普通にあります。前回もお話ししましたが、2000年以降、足立区には「つくばエクスプレス」や「日暮里舎人ライナー」が開通して、市街地の再開発が一気に進みました。それまで住んでいた一軒家を建て替えてマンションにする、という例が続出したのです。その過程で、蔵などに仕舞い込まれていた骨董品や美術品が出てきたんですよ。
みなさん、ご先祖様から受け継いだものですから、自宅で保管したいのが本音であり、希望です。しかし、生活スタイルの変化や継承者の不在などによって、どうにもこうにも所有し続けられないケースも多い。そこで、最終手段として、博物館への寄贈という選択肢が出てきます。実際、当館が収蔵している美術品は寄贈されたものがほとんどで、15年前からなんと3000点も増えています。
――3000点も! そんなに増えると、収蔵庫はあふれてしまいますね。
多田:既に、当館に設置されている収蔵庫は、空きスペースがないんですよ。そこで、湿度などの影響を受けにくい収蔵品に限り、区の遊休施設の空きスペースに保管することも行ってきました。しかし、財政難に伴い、そういった施設が取り壊される例が続いています。現在は館外に収蔵庫を借りているのですが、そこもいつ容量オーバーになるか不安です。
そこで、私どもでは貴重な資料を守るため、敢えて“除籍”したうえで、民間の方々に管理していただく道を模索しています。“廃棄”ではなく“除籍”なのがポイントです。除籍とは、博物館の管理下から外すものの、当館の理念を理解し、賛同してくださる人に管理をしていただくというものです。
――協力の申し出はあるのでしょうか。
多田:既に、当館だけで2件、引き受けてくださっている例があります。ただ、お金や収蔵スペースに余裕がないとできませんし、何より、当館の理念を理解していただくことが大事です。事実上のボランティアなので申し訳ない気持ちでもありますが、地域に根差した博物館だからこそ、住民と協働しながら文化財保護の道を考えていけると考えています。
[1/3ページ]


