SNSで炎上する博物館の“資料廃棄”問題…学芸員が明かす「収蔵品は15年間で3000点も増加」「欧米では収蔵品の廃棄、売却は一般的」という事実
受け入れには時間がかかる
――施設によって異なると思いますが、寄贈を受け入れるにあたっての基準はあるのでしょうか。
多田:当館には、基準は“一応”あります。具体的には、足立区の歴史、文化、民俗にとって重要なものを収蔵するというものです。重要というと、プレミアがついて市場価値が高いものと思われるかもしれませんが、市場価値は変動するものですよね。足立区に関わりが深く重要なものであれば、市場価値が高くない場合でも収蔵するのが基本方針です。
したがって、基準はあるものの、ケースバイケース、個別に判断している部分が大きいですね。なお、各地の博物館同士のネットワークもあります。当館で真価が判断できないものは、専門機関に照会したうえで、こちらに問い合わせてはいかがですかと案内することもあります。博物館にとって得意不得意はありますからね。
――最初から受け入れを拒否する資料はありますか。
多田:“自分の子供の絵”とか、おじいちゃんが好きだった演歌歌手のレコード10枚とか、明らかに収蔵対象として相応しくないものは最初から除外しています。ただ、時代が進むと価値観が変わって、埋もれていた絵師が注目されることも多く、判断が難しいのも事実です。
当館が多く収蔵している琳派の絵師の村越其栄や向栄は、今でこそメディアで取り上げられるなど、注目度が上がっています。しかし、20年前は全然知られていませんでした。古文書も、後から詳細に調べてみたら凄いものだったとわかることもありますから。残念ながら、寄贈の申し出の段階で、見逃してしまった文化財もあるとは思います。
――寄贈の申し出から受け入れまで、どれくらいの時間がかかるのでしょう。
多田:最短で、3~4ヶ月はかかるとみていただきたいです。品物を見て、私たちもある程度の判定はできますが、プロの識者の先生たちに価値を見極めてもらうためです。
ただ、収蔵庫が限界に達している問題は、生活様式や社会構造の変化抜きには語れません。本来、文化財は個人や地域が大切に守り、所有しているのが理想なのです。仏像はガラスケース越しで見るよりも、寺院で信仰の対象となるのが本来の姿でしょう。繰り返しますが、博物館は受け入れ先がまったくない文化財を守る、最後の砦なのですから。
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