SNSで炎上する博物館の“資料廃棄”問題…学芸員が明かす「収蔵品は15年間で3000点も増加」「欧米では収蔵品の廃棄、売却は一般的」という事実

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運営費をどのように捻出するか

――博物館に積極的に補助金を出すべきだという意見もありますが、国も財政難なのでなかなか難しい。一方で、海外でも、実は国の援助は言うほど多くありません。ただ、海外は富裕層などの寄付の文化が定着しているため、維持ができているとも聞きます。

多田:実は、私たちのような市区町村立の博物館には、国からの補助金はほとんど来ません。街づくりに関する公益信託(あだちまちづくりトラスト)で地域の方が修復費などを集めるなど、区として区民に向けた文化財を守ろうとする活動への支援はあります。町の人たちが、クラウドファンディングを実施している例もあります。

 ありがたいことに、足立区の場合は区内の企業のほか、個人でお金を寄付したいと言う人もいます。使用目的を明らかにした指定寄付金の制度はどこの自治体にもあると思いますが、今年度も300万円、その前も150万円の寄付がありました。美術品の寄贈者の方が、追加で寄付金を出してくださることもあります。

――素晴らしいですね。寄付の制度は、もっと知られてもいいのではないでしょうか。富裕層が博物館に寄付をする文化が、日本でももっと広がればいいなと思います。

多田:そうですね。ちなみに当館の場合は、足立区役所に申し出てくだされば寄付ができます。足立区の場合は地域文化課が担当です。足立区に在住の方、縁のある方、当館の理念に共感してくださった方は、ぜひ寄付をお願いいただけますと幸いです。

文化行政の在り様を考える段階にきている

――これまで多田さんの話を聞いていると、SNSで騒動になる前から収蔵庫が不足している問題が議論になっていたことがわかりますし、課題も山積していると感じました。

多田:私は以前から論文を発表し、議論を喚起してきましたから、「なぜこのタイミングで?」という思いが強いのですが、もしかすると日本の文化行政が転換期を迎えつつあるのではないかと感じます。日本では高度成長期に文化行政が盛り上がり、博物館が整備され、収蔵品を増やしてきました。それが曲がり角にやってきたという印象をもっています。

――マスコミも含め、こうした問題に関心が低かったといえそうです。ちなみに、海外では博物館が収蔵品を破棄するケースはあるのでしょうか。

多田:ヨーロッパやアメリカなどの博物館は、収蔵品の除去に関する条項をしっかり定めている例が多いんですよ。つまり、全世界的に見れば収蔵品の除去、すなわち廃棄や売却は行われているのです。ところが、日本は定めている例がほとんどありません。つまり、これまであまり問題に向き合ってこなかったともいえます。

 今回、表立って国が動いたのは、それだけ切迫している、困っている博物館が多いことの表れでしょうね。

――これまでにないほど博物館や文化行政に関心が高まっています。議論の盛り上がりに期待したいところですね。

多田:そうですね。文化行政の在り方について、みんなで考える段階にきているのだと思います。新しいコンセンサスができるまでには、10年ほどはかかることでしょう。なので、思ったこと、考えたことは忌憚なく話して議論を喚起すべきです。

 ただ、ネットでどんなに盛り上がっても、世論に影響は与えにくいと思います。それに、文化財を取り巻く問題は地域や施設によって大きく異なってくる。まずは、地域の博物館や美術館を訪れて、館内にいる学芸員と話してみるのもいいと思います。私の場合は、普段は調査のために町に出かけているので、メールや手紙がありがたいです。地域の未来のために、多くの方が関心を持ってくださることを望みます。

第1回【「貴重な収蔵品を捨てるとは何事か!」 博物館の資料“廃棄”問題に怒り心頭な人たちに欠けている視点…学芸員が明かす、2000年以降に収蔵の依頼が急増した理由】では、なぜ博物館の資料が急増し、収蔵庫を逼迫してるのかについて、足立区立郷土博物館の学芸員・多田文夫氏に、その理由、対策について伺いました。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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