「貴重な収蔵品を捨てるとは何事か!」 博物館の資料“廃棄”問題に怒り心頭な人たちに欠けている視点…学芸員が明かす、2000年以降に収蔵の依頼が急増した理由
整理の対象になる収蔵品とは
――生活様式の変化は影響として大きいですよね。昔の家には必ずと言っていいほど掛軸が飾ってありました。今は飾る家も少なくなっています。
多田:おっしゃる通りです。そもそも、最近の家には和室や床の間がないので、掛軸は飾る場所も機会もありません。屏風なんて、受け継いでも場所を取る上に、どう扱えばいいか困ってしまう。しかし、先祖代々伝わったものを無碍にするわけはいかないでしょう。そこで、博物館に受け入れてほしいという相談が増えたのです。
また、少子化に伴い、区内で学校の統廃合が進みました。それぞれの小学校には地域の歴史資料を納める部屋があったのですが、統廃合に伴い、資料が行き場を失いました。こうした資料も博物館で受け入れてきたのです。なかには貴重な資料もありますが、無制限に受け入れたら大変なことになると考え、廃棄基準を設けて対応しようとしたのです。
――貴館の具体的な廃棄基準はどうなっていますか。
多田:当館の基準を挙げれば、専門の資料館が既に収蔵している書籍や、当館がわざわざ収蔵する必要がない品物、既にデジタルのアーカイブデータなどになっているものなどです。ただ、何を残して何を廃棄するかという具体的な話は、それぞれの施設で異なってくると思います。
――そうした基準に則って、貴館でこれまでに廃棄した資料にはどのようなものがありますか。
多田:当館の前身である足立区立中央図書館郷土資料室には、郷土史を研究した地元の有識者や、学校を退職した社会科の先生たちが、たくさんの資料を残してくださいました。重要なものが多く含まれる一方で、「これはもう、不要では」「わざわざスペースを確保してまで残す意味がある資料だろうか」と疑念を抱くものも少なくありません。
例えば、浮世絵のカラーコピーや、本の内容を手書きで写したもの、骨董市で買ってきたという由緒が不明な骨董などです。いろいろな施設が収蔵していて、デジタルコレクションで公開されている稀覯本も含まれます。昔はコピー代も高かったので、カラーコピーや原稿の書き写しなどでも後生大事にするべきだと考えたのかもしれませんが、現在では代替ができるため、廃棄しても問題ないと判断しました。
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