親が保育園を選ぶ基準の第1位は「立地」。通う児童の成長を左右する保育園の実践とは
日常に「桁違いの刺激量」
やまなみこども園は、熊本市東区の住宅街にあり、保護者も公務員など平均的な年収の家庭が多い。定員は130人で、建物の大きさも、遊具もごく普通だ。
だが、いざ秋の運動会や春の発表会が開催されれば、全国から保育関係者のみならず、議員や研究者までもが視察に訪れる。その様子が保育研究の雑誌に掲載されることも少なくない。
関係者の注目をここまで集めるのは、園児たちが他園の子どもと比べて圧倒的な身体能力や芸術表現を示すからだ。そのレベルの高さは、大人が見ていても圧倒されるほどだ。
ただし、この園はスポーツや芸術表現に特化した保育をしているわけではない。行われているのは、どこにでもある遊戯やリズムといった基本的な保育を大切にした上で、日常の一つひとつの出来事の刺激を増やすことだ。
元保護者で、自身も別の保育園の園長を務める女性は次のように話す。
「私が保護者や保育士としてやまなみこども園を見ていて感じる特徴は、日常の中に〝桁違いの刺激量〟がつまっていることです。
普通の園なら、お散歩ならお散歩へ行くことが目的になります。子どもも湖畔の歩道を雑談して歩いて終わりです。しかし、やまなみの場合は、先生方がお散歩の途中に生えている木、空に浮かぶ雲、民家から漂う昼食の香りにまで何かしらの特別な意味やドラマを持たせるんです」
たとえば、園の近くにある下江津湖には、小さな無人島がある。一般的な園では、散歩中に島を指さして「どんな生き物がいるんだろうね」と話して終わりだろう。
しかし、やまなみこども園は違う。こうした日常の風景を冒険へと仕立て上げるのだ。
ある園の先生は、ふと思いついて、森に家を持つ自分の祖母に頼んで「森の不思議なおばあさん」を演じてもらうことにした。子どもたちは先生とそこへ行き、彼女から「宝の地図」をもらう。その宝の地図には、下江津湖に浮かぶ島に海賊の財宝が隠されているとある。
園に帰った子どもたちはみんなで相談し、勇気を出して島へ冒険に行くことを決める。悪い海賊を退治し、宝を奪い取ることを自分たちで決めるのだ。
そして、子どもたちは大人に手伝ってもらいながら、巨大ないかだを作り上げ、武器を手にして島へと渡る。
すると、そこには海賊に扮した大人たちが待っている。子どもたちは海賊と様々な決闘をし、最後はお菓子のたくさん入った宝箱を手にして、意気揚々と園に帰って行く――。
このような日常を超越した刺激的な遊びが、子どもの五感を震わせ、夢中にさせることは想像に難くない。
やまなみこども園流の保育は〝探検的青空保育〟とも呼ばれ、この他にも日々の保育の中にこのような子どもたちの心を揺さぶる体験が散りばめられているのだ。
創設者の山並道枝は言う。
「うちの先生たちは、子どもが園にいる間に一生分の冒険をさせようと話しています。人の気持ちを考える、人と話し合って何かを決める、勇気や道徳や正義感を持つ……こうしたことは日常の中より、冒険の中でこそ何倍も磨き上げられるのです」
冒険は子どもにとって自分の限界を乗り越える体験だ。それが子どもを大きく成長させるのは必然だろう。
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