「またまた神奈川県警か…」不祥事のデパートに警察庁長官もオカンムリ 過去には県警本部長が“警官の覚せい剤事件”を隠蔽

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本部長が事件を隠蔽も

 そして、この時期に相次いだ警察不祥事にとどめを刺したのも、神奈川県警だった。

 1996年12月12日、警備部外事課に所属していた男性警部補が横浜市西区のマンションで、不倫相手の女性に頼んで腕に覚せい剤を注射。翌13日未明、朦朧とした状態で自ら県警本部に犯行を名乗り出たものの、報告を受けた渡辺泉郎県警本部長(当時)が握りつぶすように指示し、不倫を理由に諭旨免職にした上で尿検査の結果が陰性になるのを待って薬物対策課に捜査させ、事件化を見送っていたことが1999年になって発覚したのだ。

 元警部補は不祥事発覚を受けて覚せい剤取締法違反の罪に問われ、懲役1年6月・執行猶予3年の有罪となり、犯人隠避罪に問われた渡辺元本部長は懲役1年6月・執行猶予3年。他に隠蔽工作にかかわった幹部警察官4人にも有罪判決が言い渡されている。

 一連の警察不祥事を受けて1999年11月16日、小渕恵三首相(当時)は「言語道断」と異例の発言。2000年3月2日には田中節夫警察庁長官(同)が監督責任を問われ、減給の懲戒処分を受けた。こうしたことから国家公安委員会は有識者でつくる警察刷新会議を発足させ、同会議が行った提言を踏まえて警察庁は同8月、「国民のための警察の確立」や「警察行政の透明性の確保と自浄機能強化」を柱とする警察改革要綱を策定したという経緯がある。

 警察庁元幹部は「怒鳴り散らすといった暴力団まがいの強権的な取り調べなど大阪府警も問題は少なくないが、神奈川県警の組織的な隠蔽体質も警察内部では問題視される機会が多い」と語る。

 日本の警察は自治体ごとに細分化されているため、地域ごとに違いが生じがちだ。捜査関係者は問題点をこう語る。

「地方で警察といえば、超優良な就職先で、地域にとどまるエリートが採用される。一方で首都を預かり、ドラマにも頻繁に登場する警視庁は、全国から選りすぐりの警察志願者が集まり、優秀な人材も少なくない。表現は適切ではないが、採用試験で東京に隣接する神奈川や埼玉は、警視庁志願者の第二志望や第三志望かスベリ止め。人材の質の相違を指摘する声は根強い」

 また、別の関係者は「警察内で教養と呼ぶ小手先の研修や教育では、根本的な改善は望めない」と懐疑的だ。警察官の“質”の問題解消には、自治体ごとの採用を抜本から変えるしかない、ということか。

 神奈川県警では川崎臨港署が2024年6月以降、女性やその親族からストーカーの相談を受けていたにもかかわらず殺人事件を未然に防ぐことができず、昨年4月に遺体を発見。5月にストーカー規制法違反容疑で遺体が遺棄されていたマンションに住む男を逮捕し、同7月には殺人容疑で再逮捕した。後手の対応は「逗子ストーカー事件が教訓として生きていない」と批判を浴び、県警は同9月に検証結果と今後の改善策をまとめた報告書を公開している。

 先の警察庁元幹部は「4月1日からは道交法の改正で自転車の交通違反にも赤キップが切られるようになる。“ながらスマホ”などの防止が目的だが、交通違反の取り締まりが正しく行われていなければ、違反者から協力を得るのは難しくなる。またぞろ発覚した神奈川県警の不祥事が全国の取り締まり現場に悪影響を与えないことを願いたい」と話す。

 神奈川県警の不祥事は、横浜を舞台にした人気シリーズ「あぶない刑事」よろしく「またまた」となるか、それとも「さらば」となるか……。

岡本純一(おかもと・じゅんいち)
ジャーナリスト。特捜検察の捜査解説や検察内部の暗闘劇など司法分野を中心に執筆。月刊誌「新潮45」(休刊中)では過去に「裏金太り『小沢一郎』が逮捕される日」や「なぜ『東京高検検事長』は小沢一郎を守ったか」などの特集記事を手掛けた。

デイリー新潮編集部

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